日商簿記検定と簿記能力検定の違いは何か?似ている資格を徹底比較分析

2つの簿記試験の特徴、資格試験の詳細などを解説

by GAWA_K

企業の会計・税務・資金の流れを管理する簿記は、専門性の高い業務を担当できる資格であり、その知識を活かしての独立開業も可能であるため、多くの人が取得を目指している公的資格です。

簿記には、いくつかの資格試験がありますが、その中でも「日商簿記検定」と「簿記能力検定」が資格試験の代表格として知られています。

この両者には、どのような違いがあるのでしょうか。今回は、日商簿記検定・簿記能力検定のそれぞれの特徴、資格試験の詳細などについて、詳しく解説していきましょう。

 

日商簿記検定と簿記能力検定、それぞれの特徴

同じ簿記検定としてとらえられている日商簿記検定と簿記能力検定ですが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。次より両者の特徴を説明しましょう。

日商簿記検定とは

正式名称が日商簿記検定試験である日商簿記は、日本商工会議所という機関が運営している公的資格で、簿記試験の中で最も知名度のある簿記資格および資格試験です。一般的に簿記の資格といえば、日商簿記を指す場合が少なくありません。

受検者数は毎年50万人以上で、簿記検定の中ではトップクラスの知名度を誇っています。

その知名度の高さから、取得することによって就職・転職活動において大きなアピールポイントとなるのが、受検者数の多い理由といえるでしょう。

また、自主的に取得を目指す人が多い中、企業によっては経理担当者および昇進・昇格の際に取得が必須と定められているところもあります。取得することによって大きなメリットがあるのが、日商簿記の特徴です。

簿記能力検定とは

簿記能力検定は、全経簿記の略称で呼ばれている簿記に関する資格および資格試験で、全国経理教育協会が運営しています。

経理や経営を専攻している大学生や専門学校生が対象となっており、知名度・試験の難易度ともに日商簿記検定よりはランクが下であるといっていいでしょう。

自分の簿記に関する知識がどれぐらいなのか、腕試し的な意味合いで受検をする人も少なくありません。等級の上位の試験に合格すれば税理士試験の受験資格が得られるため、受検者の中には税理士志望の人もいます。

 

日商簿記検定の試験概要

日商簿記検定の資格取得試験の詳細を、以下より説明しましょう。

・日商簿記検定の分類

  • 原価計算初級(原価計算の基本用語や原価と利益の関係を分析・理解して、業務に活用できる知識・スキルが要求される)
  • 初級(簿記の基本用語、複式簿記の仕組みの理解して、業務に対応可能な知識・スキルが要求される)
  • 3級(商業簿記の基本的な内容を理解して、経理に関する書類の処理が可能な知識・スキルが要求される)
  • 2級(3級よりレベルの高い商業簿記の知識、工業簿記の知識が要求される)
  • 1級(商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算に関する知識が要求される)

・受検資格

特になし(何級からの受検、各等級の同日受検も可能)

・試験日程

  • 原価計算初級:web経由による試験(web上で日程発表)
  • 初級:web経由による試験(web上で日程発表)
  • 2、3級:2月第4日曜、6月第2日曜、11月第3日曜の年3回
  • 1級:6月第2日曜、11月第3日曜の年2回

・受検料

  • 原価計算初級:2,200円
  • 初級:2,200円
  • 3級:2,850円
  • 2級:4,720円
  • 1級:7850円

・試験会場

  • 初級:web上の専用サイトにて開催
  • 1〜3級:全国各地にある指定会場

・申込受付日および申込方法

会場によって受付日、申込方法が異なるため、試験日の2ヶ月前には最寄りの商工会議所に連絡して確認

・合格発表日
試験終了後の約1ヶ月後に発表(各商工会議所によって発表時期は異なる)

 

簿記能力検定の試験概要

簿記能力検定の資格取得試験の詳細は、以下の通りです。

・簿記能力検定の分類

  • 基礎簿記会計(帳簿作成や仕訳の基礎、決算整理のない損益計算書、貸借対照表の作成など簿記の初歩の知識・スキル)
  • 3級(帳簿作成や基本的な決算整理など。小規模な会社の経理担当者レベルの知識・スキル)
  • 2級(商業簿記、工業簿記の知識・スキル)
  • 1級(商業簿記・会計学、原価計算・工業簿記に関する知識・スキル)
  • 上級(1級よりレベルの高い商業簿記・会計学、工業簿記・原価計算の知識・スキル)

・受検資格

特になし(何級からの受検でも可能)

・試験日程

  • 基礎簿記会計、1~3級:2月、5月、7月、11月の年4回(日曜日に開催)
  • 上級:2月、7月の年2回(日曜日に開催)

・受検料

  • 基礎簿記会計:1,600円
  • 3級:2,000円
  • 2級:商業簿記2,200円、工業簿記2,200円
  • 1級:商業簿記・会計学2,600円、原価計算・工業簿記2,600円
  • 上級:7,800円

・試験会場

全国の専門学校(全国経理教育協会が指定した学校に限る)

・申込受付日および申込方法

全国経理教育協会ホームページから申し込み、試験日の2ヶ月前から申し込み可能

・合格発表日

  • 基礎簿記会計、1〜3級:試験終了から1週間以内に、全国経理教育協会ホームページの「マイページ」から閲覧可能
  • 上級:試験終了から2ヶ月以内に、全国経理教育協会ホームページの「マイページ」から閲覧可能

 

日商簿記検定と簿記能力検定の違いとは

日商簿記検定・簿記能力検定を比較した場合、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。次より、それぞれの合格率・受検者層・就職や転職の影響などについて、比較してみましょう。

合格率

日商簿記検定・簿記能力検定の合格率を、それぞれ等級ごとにみてみましょう。

・日商簿記検定

  • 原価計算初級:90%
  • 初級:55%
  • 3級:50%
  • 2級:20%
  • 1級:10%

・簿記能力検定

  • 基礎簿記会計:75%
  • 3級:64%
  • 2級:商業簿記55%、工業簿記70%
  • 1級:商業簿記45%、工業簿記55%
  • 上級:15%

以上のように合格率だけをみた場合、日商簿記の方がトータルで合格率が低めという傾向です。

簿記能力検定は、社会人経験のない人が社会人として必要なスキルを学ぶという意味合いもあるため、難易度は優しくなっています。

ただし、簿記能力検定は完全な初心者向けの試験ではなく、上級の合格率は10%台という低めの数字です。等級が上の方であれば、十分に高度な知識・スキルを持っている証明になるでしょう。

受検者の年齢層

日商簿記検定・簿記能力検定の受検者は、どのような年齢層が多いのでしょうか。次よりそれぞれの年齢層を見てみましょう。

  • 日商簿記検定:最も多い世代が20代30未満、2番目に多いのが30〜40歳未満
  • 簿記能力検定:専門学校生が多い

どちらも若い世代が主流となっていますが、日商簿記検定の場合、40代〜60代の世代は全体的に見れは少ないですが、決して極端に少ないわけではありません。

簿記検定は基本的に年齢制限がないためあらゆる世代が受検でき、年齢を重ねてもやれる仕事であるため、毎年多くの世代が試験に挑戦しています。

日商簿記検定の場合、社会人経験を積んだ層がキャリアアップのために受検する傾向があり、簿記納涼検定の場合は専門学校生が基本の知識を身につけるために受検する傾向です。

就職・転職活動への影響

日商簿記検定・簿記能力検定の共通のメリットといえば、「あらゆる業種に対応できる」「上位の等級の資格取得をすれば税理士の受験資格が得られる」という点です。

では、就職・転職活動の際に有利となる「資格取得=専門性の高い知識・スキルを持っている証明」というメリットは、日商簿記検定・簿記能力検定どちらにも共通するのでしょうか。

結論からいうと、就職・転職の際に有利となるのは、日商簿記検定のほうです。日商簿記検定は歴史のある検定であり、一般的には「簿記の資格=日商簿記検定」というイメージがあるほど、ブランド力があります。

また、いくつか存在する簿記検定の中では最も試験の難易度も高いために、試験を合格して資格取得を達成すれば、高度な知識・スキルを持っている証明となり、企業側としても即戦力になる人材と判断してくれるでしょう。

一方、簿記能力検定は、日商簿記検定に比べるとそれほどの知名度はなく、難易度も低めです。税理士試験の受験資格が得られるのは日商簿記検定と同様ですが、社会人経験のない学生が挑戦するイメージを持つ人が少なくありません。

 

日商簿記検定・簿記能力検定、どんな人が向いている?

日照没検定・簿記能力検定は、どちらも簿記を専門的に扱う公的資格ですが、これまで解説してきたように、両者には違いがあります。では、2つの簿記検定はどのような人が向いているのでしょうか。日商簿記検定・簿記能力検定に向いている人を、以下よりそれぞれ説明しましょう。

日商簿記検定が向いている人

日商簿記検定に向いている人は、キャリアアップを目指したい人、資格を活かして仕事を頑張り収入アップを目指したい人です。

簿記は、企業の取引や経営活動の記録という、企業の業務において重要や役割を任せられます。財務諸表の作成など専門性の高い高度な知識・スキルが要求されるため、誰でもできるわけではありません。

また、簿記はあらゆる業種に対応できる汎用性があるため、簿記の高度な知識・スキルを習得しておけば、仕事に困ることはないでしょう。他の資格と併用すれば独立開業も不可能ではありません。

自分のキャリア・将来を積極的に開拓する向上心の強い人であれば、ブランド力のある日商簿記検定の資格取得をおすすめします。上位の等級の資格試験に合格するのは決して簡単ではありませんが、強い向上心があれば難易度の高い資格試験の勉強も苦にはならないでしょう。

簿記能力検定が向いている人

簿記能力検定を受検する層は専門学校生など学生が主流です。簿記に関する基本的な知識を身に付けたい、簿記試験に挑戦して資格試験の雰囲気を体験してみたいという人は、簿記能力検定が向いているでしょう。

簿記能力検定は、日商簿記検定に比べると難易度が低いため、簿記の初心者向けというイメージがあります。しかし、上位の投球は決して難易度が優しくないために、1級・上級の資格取得に成功していれば、就職・転職活動においても有利となるでしょう。

ただし本格的に簿記の知識・スキルをマスターして将来のキャリアアップに活かしたいという人であれば、日商簿記検定に挑戦した方がいいかもしれません。

 

まとめ

企業の取引や経営に関する情報を記録する簿記は、特殊な知識・スキルが必要となるため、誰でもできるものではありません。そのため、簿記の高度な知識・スキルを習得していれば、どんな業種であっても重宝されて仕事に困ることはないでしょう。

ただし、簿記検定はいくつかの種類があるため、どれが自分に適しているか考慮する必要があります。今回解説した日商簿記検定・簿記能力検定は、同じ簿記検定でありながら、その性質は異なります。

簿記検定の資格取得試験を受検しようか検討している人は、今回の記事を参考にして、どのような簿記検定が自分に相応しいのか、しっかりと考えてから行動しましょう。

 

 

「日本経済大学」では、留学生の就職活動の支援を目的とした、留学生対象の専門ゼミを開講しています。そこでは、BJTビジネス日本語能力テストの受験を推奨し、学習も行っています。

 

■日本経済大学(都築学園グループ / (学)都築育英学園)

都築学園グループは、「個性の伸展による人生練磨」を建学の精神とし1956年に設立された大学です。2018年に開学50周年を迎えた日本経済大学は、経済・経営の実学に特化した2学部6学科17の専門コースを持っています。日本有数の、留学生を抱える国際色豊かな大学です。

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