法学部を志望する受験生にとって、面接は重要な合否の分かれ道となります。大学や学部によっては、小論文や筆記試験が重視されるケースもありますが、面接の印象や受け答えが最終的な評価に大きく影響することは決して少なくありません。「なぜ法学部なのか」「将来どんな目標を持っているのか」といった質問に対して、しっかりと自分の言葉で答えられるかどうかがポイントとなります。
今回は、法学部の面接を控えた受験生に向け、一般的な面接の基本情報からよくある質問例、回答のコツ、準備の進め方などを徹底的に解説します。面接試験は緊張しがちですが、事前にしっかり知識を身につけて対策すれば、落ち着いて自分の魅力をアピールできるようになります。最後まで読んで、法学部面接を突破するためのポイントをぜひつかんでください。
1. 法学部の面接が重視される理由
1-1. 法学部の学習特性と学生の適性
法学部では、法律の条文や判例、学説などの情報を理解するだけでなく、それを論理的に組み立てて活用する力が求められます。これは講義やゼミに限らず、将来の実務においても不可欠なスキルです。そのため、法学部の教員や面接官は、受験生が論理的思考力やコミュニケーション能力をどれだけ備えているかを重要視します。
1-2. 書類や小論文だけではわからない人物像の確認
書類や小論文では、受験生の論理的思考力や文章力をある程度は判断できますが、**口頭試問を通して初めて伝わる“人間性”**も多々あります。受験生の熱意、表情、声のトーン、他者を尊重する態度などは面接を通じてこそ把握できる要素です。大学側は面接でそうした部分を見極めることで、自校の法学部に相応しい人物かどうかを判断します。
1-3. 将来の法曹・公務員・企業法務への期待
法学部の卒業生は、将来的に法曹(弁護士・検察官・裁判官)や公務員、企業法務などで活躍が期待されます。これらの職業では協調性やコミュニケーション能力、説得力などが求められます。面接段階からすでに、そうした資質を持った人材を見極めたいという大学側の意図もあり、面接が重視されるのです。
2. 法学部面接の形式・流れを知ろう
2-1. 個人面接
法学部の面接で最も一般的なのが個人面接です。1人の受験生に対して複数の面接官が質問を投げかけ、10〜20分程度で終了するケースが多いです。面接官は教授や准教授、講師などが担当することが多く、受験生に対して「志望動機」「将来の目標」「高校時代に力を入れたこと」などを質問します。
2-2. グループ面接
数名の受験生が同時に面接官と対話する形式です。限られた時間の中で自分の意見を述べ、他の受験生の意見も聞きながら、いかに自分の思考力やコミュニケーション能力を示せるかがポイントになります。グループ面接では、他者の発言を傾聴する姿勢や、適切なタイミングで自分の意見を伝える能力が特に注目されます。
2-3. プレゼンテーション形式
一部の大学・法学部では、プレゼンテーション形式での面接を取り入れることがあります。あらかじめ与えられたテーマに対してプレゼンを行い、その後に質疑応答をする流れです。プレゼン資料を用意できる場合もあれば、ホワイトボードなどに簡単な図解を書きながら行う場合もあります。論理的構成力や説得力をダイレクトに測れるため、面接官も注目します。
2-4. グループディスカッション
個別の面接とは別に、グループディスカッションが選考フローに組み込まれる場合もあります。複数人で一つのテーマを議論し、その内容や進め方を評価されます。法学部の場合、社会問題や時事問題などが題材になることが多く、受験生は限られた時間内で自分の意見をまとめ、相手の意見を整理しながら建設的な議論を行う必要があります。
3. 面接準備で押さえるべき4つのポイント
3-1. 志望動機を明確に言語化する
法学部を選んだ理由は何か、大学でどのような学びを得たいのかを具体的に表現できるようにしましょう。単に「法律に興味があるから」というだけでなく、どの分野の法律に興味があるのか、なぜ興味を持ったのかといった、自分のエピソードを交えて話すことで、説得力が増します。
具体例
- 「社会正義に貢献できる仕事がしたいと考え、法律の知識を活かしたキャリアを目指したいと思いました」
- 「高校で模擬裁判のイベントに参加して、法律の面白さや奥深さを実感しました。その経験をきっかけに法学部を志望するようになりました」
3-2. 高校時代の経験・活動を棚卸しする
面接では「高校時代に力を入れたこと」や「部活動・ボランティア経験」などを尋ねられることがあります。自分の経験や活動が法律への興味や学びの姿勢にどう繋がったのか、あらかじめ関連づけておくと、説得力ある回答が可能です。
チェックポイント
- 部活動の役割:キャプテンや部長としてのリーダーシップ、マネージャーとしてのサポート力
- 学校行事への参加:文化祭の企画・運営、体育祭でのチームリーダーなど
- 社会問題への関心:ボランティア活動やSNSでの情報発信など、自分なりの取り組みや行動
3-3. 社会や時事問題にアンテナを張る
法学部で学ぶ内容は、社会や政治、経済問題と密接に関わっています。面接でも時事問題に絡めた質問が出ることがあり、「最近気になるニュースは何ですか?」といったオープンな質問に対しても、法律の視点や社会的影響を交えて答えられると好印象です。
対策方法
- 新聞やニュースアプリを定期的にチェック
- 時事問題を自分なりに要約し、意見をまとめておく
- SNSでの情報は一次情報のソースを確認するクセをつける
3-4. 大学や法学部の特徴を調査する
志望先の法学部がどのようなカリキュラムを持ち、どんなゼミや教授がいるのかを調べましょう。「どんなゼミに入りたいか」「興味のある教授の研究分野は何か」などを具体的に話せると、入学後のビジョンが明確に伝わり、意欲が高いという印象を与えられます。
情報収集の仕方
- 大学公式サイトやパンフレットでカリキュラムをチェック
- オープンキャンパスや大学説明会で直接質問
- 大学のSNS、学生が発信しているブログ・動画なども参考に
4. よくある質問例と回答のコツ
4-1. 「志望動機を教えてください」
最も定番の質問です。自分が法学部を選んだ経緯や理由を述べた上で、「どのように大学で学びたいか」「将来どのような道へ進みたいか」を短い時間でスムーズに語る必要があります。自分の経験や価値観と法律分野の魅力を結びつけるのがポイントです。
回答例(要約)
「高校で参加した模擬裁判がきっかけで法律に興味を持ちました。そこで法律を学ぶことで、人々の生活を支えたり社会正義を実現できる可能性があると感じ、貴学の法学部で実践的な学びを深めたいと思っています。」
4-2. 「将来の目標・進路を教えてください」
将来、法律をどのように活かして社会に貢献したいのかが問われます。法曹を目指すのか、公務員を目指すのか、企業法務に興味があるのか、具体的に考えているビジョンがあればそれを伝えましょう。ただし、「まだ明確に定まっていない」という場合も、興味関心の方向性をしっかり述べておくことが大切です。
回答例(要約)
「まだ弁護士と企業法務のどちらに進むかは決めきれていませんが、法律を活かして紛争を予防・解決し、人々の生活を豊かにする手助けがしたいと考えています。法学部で幅広く法律知識を学びながら、具体的に進路を見極めたいです。」
4-3. 「高校時代に力を入れたことは何ですか?」
ここでは単に活動内容だけでなく、その活動を通じて何を学び、どのように成長したかを語ることが重要です。たとえば部活動でリーダーを務めたなら、「目標設定とチーム運営の方法を学んだ」という形で成果を整理し、それが将来の学びや法的思考とどう結びつくのかを示せると尚良いでしょう。
回答例(要約)
「サッカー部でキャプテンを務めた際、メンバー同士の意識のズレを調整し、チーム全体で同じ方向を目指す難しさを痛感しました。しかし、ミーティングを重ねるうちに、互いの意見を尊重しながら共通の目標を設定する大切さに気づきました。この経験は、将来的に人々の利害を調整する法律の世界に活かせると感じています。」
4-4. 「気になる時事問題はありますか?」
法律と密接に関係する社会問題を挙げ、自分の考えや視点を述べましょう。面接官は、問題の表面だけでなく、背後にある法的・社会的背景を考えようとしているかを重視します。また、結論ありきで議論を押し切るのではなく、多角的な視点を取り入れているかも評価のポイントになります。
回答例(要約)
「最近注目しているのは、テレワーク普及に伴う労働契約や労働時間管理の問題です。従来の労働基準法ではカバーしきれない働き方が増える中で、柔軟かつ労働者を守る仕組みづくりが求められていると考えます。実際にどのような法改正が必要か、今後の議論に注目しています。」
4-5. 「あなたにとって法律とは何ですか?」
法学部ならではの抽象度の高い質問です。法律の価値や役割について、自分の言葉で簡潔に説明しましょう。模範解答はありませんが、法律を「社会を円滑に回すルール」と捉えたり、「弱者救済の仕組み」と捉えたり、自分の価値観を込めた回答をするのが望ましいです。
回答例(要約)
「法律とは、社会全体の秩序を保ちながら人々が安心して暮らせるようにするルールだと考えています。そのルールを理解し運用することで、人と人との対立を解決し、公平性を確保できる点に大きな意義があると思います。」
5. 面接官が評価するポイントとは?
5-1. 論理的思考力
法学部の教育では、論理的思考力が非常に重視されます。面接の中でも、回答が筋道立っているか、一貫性があるかどうかを見られます。結論→理由→具体例→まとめ、といった流れを意識するだけでも、説得力が増し、論理的思考のアピールにつながります。
5-2. コミュニケーション能力
法律の世界では、相手に自分の主張を理解してもらうことや、相手の考えを正確に理解することが欠かせません。そのため面接官は、受験生の聞く力や伝える力を細かくチェックしています。自分の意見を押しつけるだけでなく、質問に対して的確に答え、無駄のない言葉遣いができるかどうかを見ています。
5-3. 熱意・主体性
法律の学びは簡単ではありません。多くの条文や判例を読み解くには、相当な努力と継続力が求められます。そのため、本当に法学を学びたいと思っているか、意欲や主体性はあるか、といった点を面接官は知りたがります。具体的なエピソードや将来ビジョンなどに、あなたの熱意が表れているかどうかがカギになります。
5-4. 適応力・柔軟性
法律の世界は日々変化しており、新しい法律が制定されたり、判例によって解釈が変わったりします。柔軟な発想や対応力がなければ、時代の変化に対応しづらくなるでしょう。面接で時事問題が取り上げられるのは、受験生の柔軟性や情報収集力を測る狙いもあります。
6. 事前準備:学習・情報収集の進め方
6-1. 基本的な法学知識の習得
高校生の段階では詳細な法律知識までは求められないものの、憲法・民法・刑法などの基礎的な概念を把握しておくと、面接時に話題を広げやすくなります。市販の法学入門書や関連する入門サイトを活用するのがおすすめです。
おすすめの学習素材
- 法学入門関連の書籍(図解やケーススタディのあるもの)
- 新書コーナーで見つかる法律解説本
- 大学の公開講座やオープンキャンパスでの法学講義
6-2. 時事問題・社会問題の整理
新聞やニュースサイトで日々起きている社会問題をチェックし、自分なりに法律の視点で捉え直す練習をしておくとよいでしょう。たとえば、少子高齢化や労働問題、環境問題などに関連して、どのような法律が絡んでいるか、あるいはどんな法改正が話題になっているかなどをリサーチしておくと、面接で思わぬ強みになります。
6-3. 大学・学部の特長の把握
すでに述べたとおり、志望先の法学部がどのような特色を持つのかをしっかり調べておきましょう。ゼミや研究会、教授陣の研究分野などに加えて、留学制度やインターンシップ制度、学生の就職実績なども確認すると、面接で話せる材料が増えます。
6-4. 自己分析の徹底
面接で「自分はどんな人間か」を伝えるためには、自己分析が欠かせません。自分の強みや弱み、経験や興味関心を整理し、それぞれがなぜ身についたのか、法学部にどう活かせるのかをまとめておくと、説得力のある回答をしやすくなります。
7. 当日の注意点:緊張対策とマナー
7-1. 身だしなみと表情
法学部の面接は、**“真面目さ”や“誠実さ”**が求められる場です。髪型、服装は清潔感を意識し、派手な装飾品は避けましょう。表情は緊張でこわばりやすいですが、相手の目を見て、ハキハキと話すだけでも好印象を与えられます。無理に笑顔を作ろうとする必要はありませんが、声のトーンを明るめにすると、印象が柔らかくなります。
7-2. 質問をしっかり聞き、焦らず答える
面接では、質問に対してすぐに答えを出そうとして、内容が薄くなってしまうことがあります。面接官の質問をしっかり聞き取ってから答えるのが大切です。分からないことがあれば、無理やり答えずに正直に「申し訳ありませんが、今のところ明確な考えがまとまっておりません」と伝えるのも一つの方法です。曖昧に答えるより、誠実さが伝わります。
7-3. 緊張をほぐす方法
- 深呼吸:面接会場に入る前に、深呼吸を数回して心を落ち着ける
- ポジティブなイメージ:面接を「自分のことを知ってもらう機会」と捉える
- 事前のシミュレーション:自己紹介や定番質問への回答を繰り返し練習する
緊張を完全に取り除くことは難しいですが、適度な緊張は集中力を高める助けにもなります。「少し緊張しているくらいがベスト」と捉え、無理に押さえつけようとしなくても大丈夫です。
8. 逆質問で差をつけるためのアイデア
面接の最後に「何か質問はありますか?」と尋ねられることがあります。ここは自分の関心の高さを示すチャンスです。あらかじめ用意しておくと、スムーズに答えられます。
8-1. 大学のゼミや研究に関する質問
- 「先生方が行っている研究はどのようなテーマが多いでしょうか?」
- 「ゼミの活動で、学外の機関と連携する機会はありますか?」
8-2. 就職・キャリアサポートに関する質問
- 「法学部生向けに、インターンシップや実務体験ができるプログラムはありますか?」
- 「キャリア支援センターでは、どのような就職支援を受けられるのか具体的に教えてください。」
8-3. 国際交流や留学制度に関する質問
- 「留学制度を利用して、海外の大学で法律を学ぶ学生も多いのでしょうか?」
- 「国際関係法に強い教授やプログラムがあれば、詳しく伺いたいです。」
ただし、パンフレットや公式サイトに載っている情報をそのまま聞くのは避けたほうが良いでしょう。事前に調べた上で、「調べた結果、○○と理解していますが、もう少し詳しく教えていただけますか?」という形式にすることで、主体的に学部をリサーチしている姿勢がアピールできます。
9. 面接後の振り返りと今後の学びに活かす方法
9-1. 面接内容のメモを取る
面接が終わった直後、聞かれた質問や自分の回答の要点をメモに残しておきましょう。今後の面接に向けた改善点や、新たに気づいた課題が見つかるかもしれません。たとえば、「時事問題の質問にうまく答えられなかった」と思えば、次回までに関連分野のニュースをしっかり読んでおくことができます。
9-2. 学習のブラッシュアップ
面接を通じて、自分の弱みや不足している知識を自覚できることもあります。それを踏まえた上で、改めて勉強計画を見直してみましょう。時事問題や法学の基本はもちろん、志望校の特徴をより深く掘り下げることで、次のチャンスに備えられます。
9-3. 周囲のアドバイスを活用する
学校の先生や保護者、友人など、第三者から見た評価やアドバイスは貴重です。自分だけでは気づけない癖(早口になりすぎる、視線が下がりがちなど)を指摘してもらうことで、面接対策の精度が上がります。今後のオープンキャンパスや進路相談会で、大学関係者に質問する機会を持つのもおすすめです。
10. まとめ
法学部の面接では、論理的思考力、コミュニケーション能力、熱意、柔軟な対応力が問われます。面接対策を万全にするためには、以下のポイントを押さえましょう。
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志望動機を明確にする
- 自分の経験と法学を結びつけるストーリーを準備。
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高校時代の経験を整理
- 部活動や委員会活動、ボランティアなどで学んだことを法学部の学びと関連づける。
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時事問題や社会問題にアンテナを張る
- 新聞やニュースをチェックし、法律的視点で考える習慣をつける。
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志望先の特徴を詳しく調べる
- カリキュラムやゼミ情報、教授の研究分野などを把握しておく。
-
当日は落ち着いて臨む
- 清潔感のある身だしなみ、ハキハキとした声、相手の目を見て回答する。
面接は、「あなた自身を知ってもらう場」であると同時に、「大学とあなたの相性を大学側が確認する場」でもあります。全てを完璧に答える必要はなく、誠実に自分の考えを伝え、法学部で学ぶ意欲や興味をアピールすることが大切です。
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