弁理士になるにはどうする?

弁理士の特徴・試験概要などを解説!

by GAWA_K

税理士や社会保険労務士(社労士)と並ぶ士業として「8士業」の中に数えられているのが、弁理士です。

士業の代表格として名前がありながらも、他の士業と比べて馴染みのない印象のある弁理士ですが、弁理士とは具体的にどのような業務を担当する職種なのでしょうか。

今回は、弁理士の特色、弁理士になるための手順などについて、詳しく解説していきます。

 

弁理士とは

弁理士とは、「知的財産」に関する法律・業務を専門に取り扱う、法律の専門家です。知的財産とは、「人間が知的活動・表現によってつくり出した財産的価値のある創作物・アイデア」を指します。具体的に当てはまるものは、音楽や絵画・著作、商品として成立するアイデアなど、その範囲は膨大です。

しかし、なかにはすでに存在している商品・アイデアを盗用して、無断で商業的な利用をする人もいます。そのような被害を阻止するために、権利の侵害・保護対策・盗用で被害を受けた人のサポートなどを法律に沿って行うのが、弁理士の業務です。

弁理士の主な業務は以下の通りです。

・産業財産権の取得
弁理士の独占業務。権利取得、鑑定や判定、技術評価書の作成

・産業財産権の解決
訴訟、裁判の手続き代行、輸出差止め手続きの代行

・取引、コンサルティング業務
著作権の管理、取引や契約の手続き、交渉の代行

上記のような複雑な手続き、交渉の代行や書類作成などが、弁理士の仕事です。

 

弁理士が働く場所・働き方

弁理士の資格取得をすれば、以下のような場所で働くことが可能です。

特許・法律事務所

特許に関する業務を専門に扱う事務所は、専門性の高い業務であるため、資格取得者でしか働くことができません。弁理士の資格取得をしていれば、高度な知識・スキルを持っているため、特許・法律事務所でその知識を存分に発揮できます。

企業内弁理士

企業によっては、自社の製品・サービスの権利を守るために、自前で知的財産権専門の部署を用意しているところもあります。そのような部署は知財部・法務部と呼ばれ、特許出願から裁判の手続きまで、その業務内容は多様です。この部署で働き経験を積むことによって、企業の経営戦略なども学べます。

コンサルティング業務、独立開業

弁理士のような士業は独占業務があるために、他の業種に比べて資格取得をしてすぐに独立開業がしやすいのが特徴です。しかし、独立開業をすれば、業務そのものに加えて事務所の経営的な業務も行わないといけないため、独立開業して必ず成功するとは限りません。

成功するためには、弁理士業務だけを行なうのではなく、企業コンサルティング業務も兼任するなど、プラスの要素が必要です。知的財産の保護などのアドバイス・サポートに加えて、経営・収益に関するアドバイス、手続き代行など、幅広い業務を担当すれば、独立開業をしても成功できるでしょう。

 

弁理士になるメリット

弁理士の資格取得にはどのようなメリットがあるのでしょうか。次より代表的なメリットを紹介しましょう。

人脈の拡大

士業の中でも弁理士は多くの同業者と顔をあわせる・交流する機会が多い職種です。弁理士は交流会・勉強会が頻繁に開催されるため、そこで業界の最新動向・情報を知ることができます。そのような場所で多くの人との交流を図れば、人脈が構築されて、また、知り合った人経由で今まで接点のなかった企業と知り合えるでしょう。

それにより、自分の得意分野の案件を紹介してもらう、あるいは企業とのライセンス契約が実現することもあります。人脈形成により仕事の幅が広がりやすいのが弁理士のメリットといえるでしょう。

働く場所の選択肢が多い

弁理士の資格取得をすれば、その高度な専門性を活かしてあらゆる場所で働けます。

弁理士として働ける場所は、特許・法律事務所に勤務、企業に弁理士として所属、独立開業をして自身の事務所を構える(特許や法律事務所、コンサルティング業務)などです。

他の職種に比べると社会的な信頼度が高く、それでいて自由度の高い働き方が実現します。

国外にも進出できる

弁理士は、他の業種に比べて海外での仕事もあるのが特徴です。弁理士が担当する業務の種類には、以下のようなものもあります。

  • 明細書の翻訳
  • オフィス・アクション(特許の拒絶通知など)の対応案の作成
  • 海外特許庁への出願

このように海外での案件も多数あるため、国内を超えての活動を自然に行なうことになります。それにより活動の幅が広がり、グローバルな人脈を築けるでしょう。

社会人の平均的な年収を超えられる

一般的なサラリーマンの平均年収は450万円といわれています。それに対して弁理士の平均年収は540万円です。先述したコンサルティング業務など弁理士以外の知識・スキルを身につけて業務の幅を広げれば、平均以上の年収も決して不可能ではありません。

飛躍的な年収アップ・キャリアアップを実現させることが可能なのが、弁理士の魅力です。

 

弁理士の試験概要

弁理士資格取得試験は、特許庁が毎年開催・運営を実施しています。試験の種類や日程は以下の通りです。

1次試験(短答式筆記試験)

・受験資格:なし
・受験料:12,000円
・受験願書請求期間: 3~4月(請求方法は、特許庁、日本弁理士会へ郵送かインターネットで請求)
・願書受付期間:3〜4月
・試験開催日:5月
・試験開催地:東京・大阪・仙台・名古屋・福岡(毎年官報で発表)
・合格発表:6月

2次試験(論文式筆記試験)

・受験資格:短答式筆記試験合格者および短答式筆記試験免除者
・試験開催日:必須科目は6~7月、選択科目は7月下旬
・試験開催地:東京・大阪
・合格発表:9月下旬

3次試験(口述試験)

・受験資格:論文式筆記試験の最終合格者
・試験開催日:10月
・試験開催地:東京
・合格発表:11月

 

弁理士試験の内容

弁理士資格取得試験の詳細は、以下の通りです。

1次試験(短答式筆記試験)

弁理士として正確な知識を確認するのが、1次試験です。出題数は60問、試験時間は3.5時間、出題範囲は以下の法律になります、

・特許法・実用新案法(20問)
発明品・アイデア考案の保護、それらを公開して産業発達に貢献するための法律

・意匠法(10問)
物理品の外観を保護するための法律

・商標法(10問)
商標の出所の表示して、商標使用者の業務上信用維持、産業発達、需要者の利益保護をする法律

・条約(10問)
パリ条約などの国際条約

・著作権法・不正競争防止法(10問)
文芸や学術、美術、音楽等精神的作品の保護のための法律、商品形態の模倣、盗用を規制する法律

2次試験(論文式筆記試験)

知識の応用力が試されるのが、2次試験です。2次試験は必須科目と選択科目に分かれます。

必須科目

2次試験の必須科目は工業所有権に関する3つの法令から出題されます。

  • 特許・実用新案:(2時間)
  • 意匠:(1.5時間)
  • 商標:(1.5時間)
選択科目

選択科目は、以下の6つの科目から1科目を選びます。試験時間は1.5時間です。

  • 理工Ⅰ(機械・応用力学):材料力学、流体力学、熱力学、土質工学から選択
  • 理工Ⅱ(数学・物理) :基礎物理学、電磁気学、回路理論から選択
  • 理工Ⅲ(化学) :物理化学、有機化学、無機化学から選択
  • 理工Ⅳ(生物) :生物学一般、生物化学から選択
  • 理工Ⅴ(情報) :情報理論、計算機工学から選択
  • 法律(弁理士の業務に関する法律):民法内から選択
3次試験(口述試験)

口頭・対面しての応答の能力が試されるのが、3次試験です。以下の工業所有権に関する3つの法令を口頭で説明します。

  • 特許・実用新案
  • 意匠
  • 商標

1科目の試験時間は10分程度です。

 

試験免除の条件

以下の条件を満たしている人であれば、1〜3次試験は免除されます。

1次試験
  • 2年以内に1次試験合格をしている者
  • 大学院で工業所有権に関する科目単位修得を達成して大学院を修了した者
  • 弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定通知書、または条件付認定通知書が交付されている者
  •  特許庁にて審判、あるいは審査の事務に5年以上従事した者
2次試験

2次試験の試験免除は、必須科目・選択科目によって条件が異なります。

必須科目
  • 2次試験の必須科目に2年以内に合格した者
  • 特許庁にて審判、あるいは審査の事務に5年以上従事した者
選択科目
  • 2次試験の選択科目に2年以内に合格した者
  • 工業所有権審議会から免除資格認定を受けた者
  • 専門職大学院の一定の単位を修得して、工業所有権審議会から免除資格認定を受けた者
3次試験
  • 特許庁にて審判、あるいは審査の事務に5年以上従事した者

 

弁理士に向いている人

弁理士という職種に向いている人とは、どのようなタイプなのでしょうか。以下より便利に向いている人の特徴を紹介しましょう。

コミュニケーションスキルに長けている人

弁理士は専門性の高い業務ではありますが、他の職種と同様の「客商売」であることに変わりはありません。顧客・依頼主がどのような希望を持っているか、それをしっかりと具現化するのが弁理士の仕事です。

ただ、自分の業務を自分のペースで行なうのではなく、顧客・依頼主をベースに業務を進めなくてはいけません。そのためには、ヒアリングなどのコミュニケーション能力が必須といえるでしょう。

最新の情報に興味がある人、情報収集が得意な人

常に世の中の流行に敏感、最新のデバイスが発表されたらすぐに購入、色々な人から話を聞き出すなど、最新情報の収入が得意・好きな人であれば、弁理士に向いています。

最新テクノロジー・技術の開発、世の中の指向の変化などは、知的財産と関係のない話題ではありません。常に多方面からの新しい情報をインプットして、知識のアップロードを心がけることによって、今後も業務が継続できるかどうかが決まります。

論理的な考え・説明ができる人

知的財産・著作権・権利に関する法律は、複雑な構造で成り立っています。そのため、あらゆることを順序を立てて理解をする頭がないと業務を遂行できません。

また、いくら弁理士一人が理解をしても、弁理士の相手である顧客・依頼主といった法律に関する初心者にも、わかりやすく説明して理解してもらう必要があります。

普段から論理的に物事を考えて、「これは・こうだから・こうなった」と納得する癖がついている人は、弁理士に向いているでしょう。

洞察力がある人

先の先まで読める・深い部分にまで考えが及ぶといった、洞察力のある人は弁理士に向いています。弁理士が手掛ける案件で、依頼主と意見の相違が起こる場合もあります。

依頼主が希望する方向性が本当に安泰であるか考察して、安泰でない場合は何がダメなのか指摘して、正しい方向へ誘導することも弁理士の仕事です。

リスクを回避して結果的に良い位置に着地させるためには、洞察力も重要といえるでしょう。

 

まとめ

知的財産とは、法律で定義されていながらもその存在が曖昧なため、高い専門性がないと管理が難しいといわれています。その知的財産に関する法律・知識を熟知した専門家が、弁理士です。

弁理士は士業であるため、弁理士しかできない独占業務を行なうことが可能であり、資格取得さえすればすぐに独立開業もできます。しかし、資格取得を達成するには、難易度の高い資格取得試験に合格しないといけません。

今回は、弁理士になる方法・資格試験の詳細などについて解説しました。資格取得をすれば多大なメリットのある弁理士に、興味を持ってもらえたら幸いです。

 

 

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■日本経済大学(都築学園グループ / (学)都築育英学園)

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