産業カウンセラーになるには

取得試験の種類、方法などを解説

by GAWA_K

近年、メンタルヘルスやハラスメント問題は、社会的に認知されつつある課題ではありますが、深い理解を示していない企業も存在しています。特にメンタルに関する問題は具体的な症状が出る病気ではないため、どのような対応をしていいのかわからない、問題を放置している企業もあるでしょう。

そのような課題を改善するためのアドバイス・サポートを担当するのが、民間資格の産業カウンセラーです。まだそれほど認知度が高いとはいえないこの資格は、どのような手順で取得するのでしょうか。

今回は、産業カウンセラーの業務内容・資格取得のための試験の概要、取得した際の注意点などについて、詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

 

産業カウンセラーの業務内容

産業カウンセラーとは、具体的にどのような仕事をするのか、業務内容などについて以下より説明しましょう。

産業カウンセラーとは

産業カウンセラーとは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会という組織により認定されている、民間資格およびその資格所有者のことです。資格の種類は、産業カウンセラー・その上位資格であるシニア産業カウンセラーの2種類です。

産業カウンセラーの業務内容は、以下の4つに分類されます。

  • メンタルヘルス対策
  • キャリア開発の支援
  • 職場の人間関係の問題への対応
  • 職場の環境改善

産業カウンセラーの特徴は、心理学の一種である「産業心理学」をベースに業務を進めることです。デリケートな部分である相談者の心を読み取り、仕事に関するあらゆる悩みの相談を聞き、適切なアドバイス・支援を行ないます。そして、相談者が自らが問題を乗り越える力を身につけて、いきいきと働けるためのサポートをするのが、産業カウンセラーの目的です。

キャリアコンサルタントとの違い

産業カウンセラーと同じ意味合いと思われているのが、産業カウンセラーと同じく日本産業カウンセラー協会が認定している、国家資格のキャリアコンサルタントです。

産業カウンセラーは、ストレスやパワハラなどで悩む労働者およびその家族へのケア・アドバイスなどを行ないますが、キャリアコンサルタントは仕事のキャリアアップのための能力開発や支援を行ないます。

産業カウンセラーもキャリア開発のアドバイスを行ないますが、キャリアに関する支援に特化しているのが、キャリアコンサルタントです。

  • キャリアコンサルタント:キャリアアップを希望する労働者・学生・転職希望者を支援
  • 産業カウンセラー:仕事のストレスや過酷な労働環境に悩んでいる人をサポート・支援

二つの資格は、このような違いがあります。

 

産業カウンセラーの必要性

作業カウンセラーは、他の有名資格に比べるとまだ知名度がないと思っている人もいるでしょう。しかし現在、産業カウンセラーの存在は重要視されているのです。

メンタルヘルスは通常の病気と異なり、わかりやすく症状が出るものではないために、かつての日本では「社会不適応者」「仕事に対してやる気のない人間」という判断しかされませんでした。

しかし時代は変わり、メンタルヘルスに関する問題を取り上げる企業は増加して、多くの企業がストレスチェックなどの対策に取り組んでいます。

また、2020年6月には「パワハラ防止法」によって、各企業のパワハラ防止対策が義務となりました。パワハラ防止法とは、正式名称・労働施策総合推進法といい、2019年に雇用対策法が改正されてできた法律です。労働者がいきいきと働ける環境づくりを実現するために、法律改正の運びとなりました。

当初、パワハラ防止法は大企業を中心とした義務付けでしたが、2022年には義務対象が拡大して中小企業までが必須となり、今後ますます義務対象が拡大していく流れです。

労働環境、パワハラが原因のメンタル不調は、結果的に企業全体の労働力・生産の低下を招きます。そのため、多くの企業が対策に力を入れています。

そのような時代にとって、心理学などの豊富な知識をもとに適切なアドバイス・サポート・支援が可能な産業カウンセラーは、多くの需要があるのです。

 

産業カウンセラー資格試験の受験資格

産業カウンセラーの資格を取得するためには、日本産業カウンセラー協会が開催している資格試験を受験して合格する必要があります。そして産業カウンセラーの資格試験を受けるためには、受験資格を満たさなくてはいけません。その受験資格とは以下の通りです。

  • 産業カウンセラー養成講座を受講して講座修了した場合
  • 4年制大学学部の心理学・心理学隣接諸科学・人間科学・人間関係学のどれかを卒業、所定の科目単位取得を達成した場合
  • 大学院研究科の心理学・心理学隣接諸科学・人間科学・人間関係学のどれかを卒業、所定の科目単位取得を達成した場合

以上の3つのうち1つだけでも条件を満たしていれば、資格試験の対象となります。

 

シニア産業カウンセラーの受験資格

産業カウンセラーの上位資格・シニア産業カウンセラーの受験資格は、以下の通りです。

  • 産業カウンセラーの資格登録者でシニア産業カウンセラー育成講座を修了した場合
  • 産業カウンセラーの資格登録者で、大学院研究科の心理学・心理学隣接諸科学・人間科学・人間関係学のどれかを修了、所定科目の単位取得を達成した場合

 

産業カウンセラー養成講座の詳細

産業カウンセラーとしての大事な要素を学べるのが、産業カウンセラー養成講座です。この講座ではカウンセラーにとって大事な要素である「傾聴力」「心理学・メンタルヘルスに関する専門知識」「ファシリテーション力(ミーティングなど大勢の状況を円滑に進める能力)」を学びます。

養成講座の詳細を次よりみてみましょう。

コースの種類
  • 6ヶ月コース(開始時期は4月・11月の2タイプ)
  • 10か月コース
学習スタイル
  • 通学
  • 通学+オンライン
  • フルオンライン
講義内容
  • 面接の体験学習104時間(15~16日間)
  • 面接の体験学習に関する課題学習6課題 28時間相当
  • 講義動画視聴 44時間相当
  • 理解度確認テスト 13時間相当

科目は、傾聴、心理学、法律など合計19種類

受講料

税込297,000円(無料説明会・無料体験講座に参加した場合は5,500円割引)

 

シニア産業カウンセラー養成講座の詳細

上位資格であるシニア産業カウンセラーの養成講座は、以下のような詳細となっています。

講義内容

全23科目を受講・修了することで講座修了。

  • カウンセリング能力(12科目)
  • 人間関係・組織開発を援助する能力(6科目)
  • 組織に働きかける能力(2科目)
  • シニア産業カウンセラーとしての素養的能力(3科目)
受講料
  • 科目No.23-1:3,850円(税込)
  • 3時間の科目:8,250円(税込)
  • 6時間の科目:16,500円(税込)
  • 12時間の科目:31,900円(税込)
  • 18時間の科目:47,300円(税込)

 

産業カウンセラー資格試験の概要

産業カウンセラー資格試験の概要を、次より説明しましょう。

試験の日程

産業カウンセラー試験は、学科・実技の2つに分かれており、それぞれの日程は異なります。試験の日程は2023年度の場合、以下の予定となっています(以下の日程はすべて予定)。

学科試験
  • 6月25日
  • 翌年1月21日
実技試験
  • 7月1日〜2日
  • 翌年1月27日〜28日
試験内容

試験内容は以下の通りです。

学科試験

学科試験の範囲は次の5つの項目から、学科試験1(5択マークシート方式40問、90分)と学科試験2(20問マークシート方式、60分)に分類されて出題される仕組みです。

  • 産業カウンセリング概論
  • カウンセリングの原理および技法
  • パーソナリティー理論
  • 職場のメンタルヘルス
  • 事例検討
実技試験

実技試験は、受験者同士によるロールプレイング、試験官との口述試験です。これらにより、産業カウンセラーにとって重要な能力である「基本的態度」「適切な技法」「自己理解的側面」「社会的貢献」が問われます。

態度や言葉使い、コミュニケーション・会話スキルが重要となる試験です。

受験料

産業カウンセラーの受験料は、学科試験10,800円・実技試験21,600円です。学科と実技のどちらかに合格してどちらかが不合格になった場合、翌年・翌々年の試験の際、合格済みの試験は、受験免除となります。

合格基準、合格発表日

試験の合格基準は、6割以上の得点です。合格発表は、試験の約1ヶ月後に普通郵便の発送にて報告されます。

 

シニア産業カウンセラー資格試験の概要

シニア産業カウンセラー資格試験の詳細を、以下よりみてみましょう。

試験日程

シニア産業カウンセラー試験の日程は、2023年の場合2月25日〜26日となっています。

試験内容

シニア産業カウンセラー試験は、面接で行われます。事前に提出した書類をもとに以下の事項に関して質疑応答をする流れです。

  • 産業カウンセリングに関連する実践活動に関すること
  • 提出したケースのスーパービジョンに関すること
  • シニア産業カウンセラーとしての人間性・倫理性等に関すること

筆記試験ではなく実技試験のような対話形式での試験なので、自分の考えをまとめて言語化できるコミュニケーション・会話スキルが要求されます。

 

産業カウンセラー資格取得後の注意点

産業カウンセラーの資格を無事に取得した後も、注意しなければいけないポイントがあります。その注意点とは何か、以下より説明しましょう。

他の知識も学ぶ必要がある

産業カウンセラーは、企業に配属して業務を行ないますが、常勤および非常勤・社員やアルバイト・パートなど、業務形態はさまざまです。自分の都合に合わせて業務形態を選べることがメリットですが、配属された企業によって業務内容を合わせる必要もあるでしょう。

企業といってもさまざまなタイプがあり、それぞれ社風・特性があります。そのため、その特性に合わせてどのようなカウンセリングが最もふさわしいのか、臨機応変に対応してプラン提供を行なうことが大事です。

産業カウンセリング講座で得た知識だけでなく、最新のメンタルヘルス・パワハラ事情などの情報をインプットして、常に知識をアップデートする必要があります。それにより、知識の引き出しが多くなり、多くの企業で仕事ができるでしょう。

資格更新がある

産業カウンセラー資格取得者は、日本産業カウンセラー協会の会員登録が必須ですが、会員登録には5年間の有効期限があります。更新したい場合の更新料は3,000円です。また、会員の年会費1万円も支払う必要があります。

そして、資格登録を更新するためには、有効期限の5年間のうちに、1日6時間の研修を受けなくてはいけません。この研修は資格登録更新のために受講は必須です。

 

まとめ

メンタルヘルス・パワハラ対策の役割を果たす産業カウンセラーは、企業に所属する従業員だけでなく、近年は企業側からの多大なニーズがある仕事として注目されています。企業側が産業カウンセラーを導入することによって、「この企業はブラック・パワハラのないクリーンな企業」というイメージアップにつながるからです。

ひと昔前の価値観がなくなりつつある昨今、クリーンな労働環境づくりを推進する産業カウンセラーは、今後ますますニーズが広がる仕事といえます。他の資格に比べると難易度もそれほど高くはないため、資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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■日本経済大学(都築学園グループ / (学)都築育英学園)

都築学園グループは、「個性の伸展による人生練磨」を建学の精神とし1956年に設立。2018年に開学50周年を迎えた日本経済大学は経済・経営の実学に特化した2学部6学科17の専門コースを持つ日本有数の留学生を抱える国際色豊かな大学です。

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