人間環境学部は、環境問題だけでなく、人間の心理や社会構造、文化、地域コミュニティなどを幅広い視点から総合的に考察する学部です。近年の地球規模の環境問題、少子高齢化や都市化、コミュニティの変化など、多様化する社会の課題に対して総合的にアプローチし、解決策を探ることを目指している大学も少なくありません。
こうした学問分野は、自然科学や社会科学、人文科学など、さまざまな領域の知識を必要とし、学際的(分野横断的)な研究・学習が特徴です。そのため、面接では「なぜ人間環境学部を選んだのか」「学際的な学びにどう興味を持っているか」「どのような視点で社会を見ているか」などが重点的に問われやすい傾向があります。
今回は人間環境学部を志望している受験生の方向けに、面接でよく聞かれる質問や準備のポイントを徹底解説します。自分の経験や興味、将来の目標などをしっかり整理し、自信を持って面接に臨めるよう参考にしてください。
1. 人間環境学部とは何を学ぶ学部なのか
1-1. 人間環境学部の学際的な特徴
人間環境学部は「人間」と「環境」の関係を多角的に考えるのが大きな特徴です。環境とは一般的に「自然環境」を思い浮かべるかもしれませんが、人間環境学部で扱う環境は自然環境だけでなく、社会環境や心理的環境、文化・歴史的な環境も含んだ広義の概念です。
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自然環境:気候変動、森林・水資源の保全、生態系保護など
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社会環境:都市計画、地域コミュニティ、人口構造、福祉制度など
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心理・文化環境:人間関係、コミュニケーション、文化遺産、歴史、教育など
それらを総合的にとらえ、複数の学問領域(例えば生物学、社会学、心理学、経済学、地理学など)を結びつけて学習・研究するのが人間環境学部の大きな魅力です。
1-2. どんな学生を求めているのか
学部の性質上、「幅広い問題意識」を持っている学生が求められます。具体的には、
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自然や社会の課題に関心が高い
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異なる分野の知識を積極的に吸収する意欲がある
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自分の関心を人や社会に役立てたい思いがある
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論理的に考え、コミュニケーションを通じて課題解決に取り組める
といった姿勢が評価されます。大学のパンフレットやホームページでも「どんな学生を求めるか(アドミッション・ポリシー)」が明記されていることが多いので、必ずチェックしておきましょう。
2. 人間環境学部の面接でよく問われるテーマ
2-1. 志望理由・動機
志望理由は面接の大定番です。とりわけ人間環境学部の場合、「どうしてこの学部で学びたいのか?」が重要視されます。
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なぜ他の学部ではなく人間環境学部を選んだのか
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人間と環境の関係を学ぶことに興味を抱いたきっかけ
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その興味・関心が将来の目標とどうつながるのか
例えば、「都市の過密化や高齢化が進む中で、環境に優しく、かつ地域社会を活性化させる街づくりに興味がある」「自然保護活動に参加した経験から、学際的なアプローチが必要だと実感した」など、具体的なエピソードを絡めると説得力が増します。
2-2. 学際性への理解
人間環境学部では、複数の分野を横断して学ぶことが前提です。面接官は「本当に幅広い学問を学ぶ覚悟があるか」「学際的な学習に興味があるか」を重視します。質問としては、
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「人間環境学は学際的ですが、その点をどう感じますか?」
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「文系・理系を横断する学習をどのように活かしたいですか?」
などが考えられます。ここでは単に「いろいろ学べて面白そう」ではなく、「なぜ学際的な視点が重要だと思うのか」「どのような問題解決が期待できるのか」を自分なりに論理立てて語れるといいでしょう。
2-3. 社会の問題意識・関心
人間環境学部で学ぶ内容は社会の多様な課題と直結していることが多く、面接官が「最近の社会問題に関心を持っているか?」をチェックすることがあります。例えば、
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少子高齢化問題と地域コミュニティの維持
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環境汚染や気候変動と生活様式の変化
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多文化共生社会の形成とその課題
などに対して、あなたがどのような視点を持っているのかを問われるかもしれません。自分の興味がある社会問題については最新の情報や統計データ、ニュース記事などを確認し、面接で自分の意見を述べられるように準備しておきましょう。
2-4. 将来のビジョン
「大学卒業後にどんな分野に進みたいか」「学んだ知識をどのように活かしたいか」はどの学部でも聞かれやすい質問ですが、人間環境学部は特に多様なキャリアパスがあるため、面接官もそこに興味を示します。たとえば、
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自治体やNPOで地域活性化や環境保全に取り組みたい
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企業のCSR(社会的責任)やSDGs推進に関わりたい
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研究者として自然科学や社会科学の観点から環境問題を深く追究したい
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教育や国際協力の現場で、人間環境について学んだ知見を活かしたい
などが考えられます。まだ明確な進路が定まっていない場合でも、「こういう方向に興味があって、自分なりに情報を集めている」と示すだけでも意欲は伝わります。
3. 面接準備のポイント
3-1. 志望動機の深掘り
人間環境学部の志望動機は「社会課題を解決したい」「環境保護に興味がある」など比較的一般的になりやすい一方で、それだけでは差別化が難しくなります。そこで、自分の体験や具体的なエピソードを交え、深掘りすることが大切です。
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きっかけ:例えば地元の川が汚れていたのを目撃して環境問題に関心を持った、ボランティア活動で地域コミュニティに触れて課題を実感したなど。
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興味分野の発展:きっかけを得た後にどのように情報収集や学習を進めたか、さらに関心が広がったエピソード。
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将来像:学部での学修を通じて何を実現したいのか、社会や自分自身にどんな変化を起こしたいのか。
この3ステップで自分の思いを論理的につなげると、説得力のある志望動機になります。
3-2. 学部のカリキュラムを研究する
多くの人間環境学部は、以下のように大まかに科目を分類していることが多いです。
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自然科学系科目:生態学、環境科学、気候学など
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社会科学系科目:社会学、経済学、政治学など
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人文科学系科目:哲学、文化人類学、歴史学など
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フィールドワークや実習:地域調査、環境調査、海外研修など
大学ごとに特色があり、フィールドワークに力を入れている大学もあれば、心理学や教育学を深く学べるカリキュラムを用意している大学もあります。志望する大学のホームページやパンフレットをよく読み、「この科目に特に興味があるからこそこの大学で学びたい」と言えるよう準備しましょう。
3-3. 最新の社会問題・環境問題をチェックする
人間環境学部を目指すなら、SDGs(持続可能な開発目標)に関する話題や国内外の環境・社会問題、国や自治体の取り組みなどを日頃からウォッチしておくとよいでしょう。面接官が「最近気になるニュースや社会問題は?」と聞くケースも少なくありません。例えば、
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「海洋プラスチック問題」
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「森林破壊とCO2排出」
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「少子高齢化と地方創生」
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「大都市圏の過密化や空き家問題」
こういったテーマを取り上げ、自分なりの考えや解決策へのアイデアを述べられると、「社会への関心度が高い」とアピールできます。
3-4. 模擬面接・自己アピールの練習
自分が一番アピールしたい点を整理し、何度も口に出して練習すると、本番で落ち着いて答えやすくなります。
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志望動機:なぜ人間環境学部なのか、なぜその大学なのか
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自己PR:他の志望者と比べたときのあなたの強みや特徴
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長所・短所:短所を克服するための努力や工夫も伝える
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想定質問への準備:「今後取り組みたい研究テーマは?」「社会問題の中で関心があるものは?」など
録音や動画撮影で自己チェックすると、声の大きさや話すテンポ、姿勢などの改善点が見えてきます。
4. おすすめのアピールポイント
4-1. 好奇心・探究心
人間環境学部での学びは、複数の分野を横断するため、幅広い興味と探究心を持つ学生が求められます。面接では、「どうしてもこれが知りたい」「この問題を研究したい」という強い意欲が伝わるとプラス評価になりやすいです。
4-2. 協調性・コミュニケーション力
環境問題や地域課題は、個人だけで解決できるものではなく、多様な人々との連携が欠かせません。そこで協調性やコミュニケーション力をアピールできるエピソード(学校行事のリーダー経験、部活動での連携、ボランティア活動など)があると、学部の理念にも合致します。
4-3. 実践的な経験やエピソード
地域活動やボランティア、環境保護活動、海外体験など、実際に足を使って行った行動があれば、大きな強みになります。特にフィールドワークを重視する人間環境学部では「実践的な学び」を重要視しているため、それを匂わすエピソードは面接官に好印象を与えます。
4-4. 自分なりの将来ビジョン
明確な職業名まで定まっていなくても、「地域社会に貢献できる仕事に就きたい」「企業でCSR部門に携わり、持続可能な仕組みを作りたい」など、自分なりの方向性を示すだけでも十分。将来ビジョンを語る際は、“社会全体”と“自分”の双方にメリットがある視点を意識するといいでしょう。
5. 面接当日の注意点と心構え
5-1. 緊張は当たり前、適度にほぐす方法
面接本番はどうしても緊張するものです。大事なのは**「適度な緊張を保ちながらも、自分の伝えたいことをきちんと話す」**こと。人間環境学部への熱意を思い出し、「伝えたい内容はしっかり準備してきた」と自分に言い聞かせて、深呼吸して臨みましょう。
5-2. 自分の言葉で語る
丸暗記した文章を棒読みすると、面接官はすぐに気づきます。また、面接官の質問に対して柔軟に答えられないことが多くなります。キーワードはおさえておきながらも、自分の言葉で誠実に回答することを心がけましょう。
5-3. わからないことは正直に
面接官から予想外の質問が来ることもあります。そんなときに適当に答えてしまうと、返って失敗を招きかねません。わからない内容であれば「すみません、まだ十分に勉強できていませんが、○○に興味がありますので今後もっと学びたいです」といった形で、学ぶ意欲を示す方が好印象です。
5-4. 姿勢や表情、マナーも大切
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入室時の礼儀:ノック、扉の開け方、挨拶のタイミング
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姿勢:椅子に深く座りすぎない、背筋を伸ばす
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表情:笑顔や明るい表情、面接官の顔を見て話す
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退出時の礼儀:最後の挨拶、ドアの閉め方
これらの基本的なマナーも忘れずに。第一印象を良くするだけでなく、自分自身の落ち着きにもつながります。
6. まとめ
人間環境学部は、自然科学・社会科学・人文科学など多様な分野が交差する学問領域です。社会や環境の課題を解決するためには一つの専門だけでは不十分で、複合的な視点が必要だという考え方を学ぶ場といえます。そうした学部への進学を希望する受験生には、幅広い視野と探究心、社会への問題意識があるかが重要視されます。
面接で大切なのは、
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志望動機を深掘りし、具体的なエピソードを交えて伝える
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学際的な学びに対する興味・意義を自分の言葉で語る
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社会問題・環境問題への関心を示し、自分の考えや行動力をアピールする
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将来ビジョンと人間環境学部での学びを結びつける
というポイントです。そして、当日は基本的なマナーを守りつつ、緊張を力に変えて自分の熱意をしっかり面接官に伝えましょう。
人間環境学部での学習は、きっとあなたの世界観を広げ、大きな成長につながるはずです。自分の思いや興味を素直に言葉にして、面接に臨んでください。あなたの成功を心から応援しています!