警察官採用試験の「Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類」とは?

名称に惑わされない区分の基本ガイド

by info@remi.website

これから公務員を志す方にとって、最初に迷いやすいのが「採用の区分」です。
呼び方や募集要件は自治体によって異なり、ローマ数字(Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類)で表す場合もあれば、「A・B区分」や「大学卒業程度/高校卒業程度」といった表記を使う場合もあります。

本記事では、そうした“名称のちがい”に惑わされずに理解できるよう、一般的な仕組みを中立的に整理しました。特定の地域や時期に依存しない内容をもとに、これから受験を考える方が混乱せずに次のステップへ進めるようガイドします。
(※詳細は必ず各自治体の最新の募集要項をご確認ください。)


1.まず押さえたい「名称」の考え方

採用区分の呼び方には全国共通の統一規格はありません
「Ⅰ類」「Ⅱ類」「Ⅲ類」とローマ数字で表す地域もあれば、「A・B区分」や「大学卒業程度/高校卒業程度」という表記を採用する自治体もあります。

名称は違っても、「どの学力水準を目安にしているか」を示すという役割は共通です。
また、同じ自治体でも、年度によって区分の統合・新設・表記変更が行われることがあります。受験前には必ず最新の募集要項をチェックしましょう。


2.応募要件の目安(学力水準と年齢幅)

多くの自治体では、上位区分ほど大学卒業程度の学力を前提とし、下位区分では高校卒業程度を目安としています。
ただし、実際には「卒業見込み」や「同程度の学力を有する方」も受験できるケースがあり、年齢制限の幅も異なります。

したがって、「自分の最終学歴」だけでなく、「応募資格を満たす根拠」を募集要項で丁寧に確認することが大切です。


3.試験の基本構成

多くの自治体では以下のような流れが一般的です。

  • 一次試験:教養試験(または基礎能力検査)+論(作)文+適性検査

  • 二次試験:面接・身体検査・体力検査 など

近年では、教養試験の代わりにSPIなどの基礎能力検査を導入する地域も増えています。
出題内容や時間配分は自治体ごとに異なるため、自分の得意分野に合う方式かどうかを確認しておきましょう。


4.採用後の流れ(警察学校での初任教養)

採用後はまず、警察学校での初任教養(座学・術科・生活指導など)を受けるのが共通ルートです。
A・Bなどの区分で在校期間が異なる自治体もありますが、これは待遇の差ではなく、教育設計上の違いによるものです。
全員が基礎を固めてから現場へと配属される点はどの地域でも共通しています。


5.配属・職務内容のちがい:区分よりも「人」で広がるキャリア

「Ⅰ類だから指揮官職」「Ⅲ類だから現場限定」といった固定的な区分は、実際には設けられていません。
多くの自治体では、採用後の評価・適性・勤務実績を総合的に見て担当業務が決まります。つまり、入職後の努力や成長がキャリア形成に直結するというのが、警察という組織の基本的な考え方です。

たとえば、同じ交番勤務からスタートしても、ある人は地域の防犯活動や少年補導に力を入れ、またある人は交通取締りや事故対応のエキスパートとして評価を高めていきます。そうした日々の成果や上司からの信頼の積み重ねが、将来的な昇任や専門職への道へとつながります。

一方で、「最初の配属はどんな仕事をするのか?」という点は多くの受験者が気になるところでしょう。一般的には、地域警察(交番・駐在所)勤務からスタートするケースが多く、現場での市民対応を通じて、警察の基本を学びます。
現場で身につくのは、単なる法律知識だけでなく、人の話を聞く力・状況判断力・コミュニケーション力といった社会的スキルです。こうした経験は、後のどの部署に進んでも生きてきます。


6.キャリアアップと昇任制度:努力が公平に評価される仕組み

警察官のキャリアアップは、主に以下の二つの仕組みで構成されています。

  1. 昇任試験による昇任

  2. 勤務成績や実績による選考昇任

この二つの制度が組み合わさることで、「学歴や性別で一律のハンディを設けない」運用が可能となっています。
つまり、学歴や採用区分にかかわらず、現場での努力と実績次第で上位階級を目指せるのです。

昇任試験では、一定の在級年数を経たのちに、筆記試験や面接を通して上位階級への昇進を競います。試験では法律や一般常識だけでなく、状況判断・部下指導・組織運営といった管理能力も問われます。
また、勤務態度や地域での評価など、日々の業務が昇任の判断材料になる場合もあります。
たとえば、地域住民との信頼関係を築いたり、事件解決に大きく貢献したりするなどの成果は、上司の評価として蓄積されます。

自治体によっては、学歴や区分に応じて「昇任試験を受けられるまでの年数」に差があるケースも見られますが、それは組織運営上の設計によるもので、「上位区分だから昇進しやすい」という単純な構造ではありません。
警察官のキャリアは、努力の積み重ねによって開かれていくのです。


7.専門区分の有無:得意分野を活かして社会に貢献する道

近年では、社会の変化に対応するため、一般区分とは別に「サイバー」「語学」「術科」などの専門枠を設ける自治体も増えています。

● サイバー分野

SNSやオンライン犯罪への対応力を強化するために設けられた区分で、情報セキュリティやプログラミング、ネットワーク知識などを活かせます。
サイバー犯罪対策課などへの配属が想定され、IT系学部出身者や独学で技術を身につけた人にも活躍のチャンスがあります。

● 語学区分

外国人観光客の増加や国際犯罪への対応のために、英語や中国語などの語学スキルを持つ人材が求められます。海外要人の警護や国際捜査の通訳など、グローバルな業務にも関わることができます。

● 術科区分

柔道・剣道・逮捕術といった警察の基礎技能に特化した区分で、術科指導員などのポジションを目指す道があります。身体能力や精神力を活かしたい人に向いています。

専門区分は、一般採用とは異なる出題内容や評価基準が設定される場合があります。
ただし、毎年必ず実施されるとは限らないため、志望する人は早めに公式の募集情報を確認しておきましょう。


8.名称に惑わされないためのチェックポイント:自分に合った受験戦略を立てよう

受験区分を選ぶときに迷う最大の理由は、「Ⅰ類」「Ⅱ類」などの名称が自治体ごとに異なることです。
しかし、重要なのは名前ではなく、自分にとってどの方式が合うかを見極めることです。

チェック項目 確認のポイント
学力・学年とのフィット感 卒業見込み/既卒の扱い、受験資格を確認
試験方式との相性 教養型(知識重視)/SPI型(思考力重視)どちらが得意か
初任教育の内容 警察学校での期間・訓練環境が自分に合っているか
長期的キャリア観 昇任制度の仕組みや目標階級を明確にイメージできるか

受験の段階で完璧なキャリアプランを立てる必要はありません。
ただし、「入ってからどう成長していくか」という視点を持って選ぶことが、結果的に長く活躍できる道をつくります。


9.よくある誤解を整理:区分の“イメージ”に惑わされない

公務員試験に関しては、インターネット上で多くの情報が飛び交っています。その中には誤解も少なくありません。ここでは、特によくある三つの誤解を整理しておきましょう。

  1. 「上位区分=仕事の範囲が広い」とは限らない
     初任段階では職務内容に大きな差はなく、むしろ現場での適性と成果が将来の配属を左右します。

  2. 「名称の違い=全国共通の格差」ではない
     区分名は各自治体が独自に定める「ラベル」にすぎず、制度や教育設計の方針が違うだけです。

  3. 「試験方式の変更=難易度の変化」とも限らない
     SPI型の導入や出題形式の改定があっても、求められる基礎能力・人物評価の軸は共通しています。

正しい理解を持つことで、不安を減らし、自分に合った準備ができるようになります。


10.正確な情報の取り方:公式発表を“最優先”にする

最後に最も重要なポイントを。
採用情報を調べる際には、まず全国の公式ポータルサイト各都道府県警察の採用ページにアクセスしましょう。

民間のまとめサイトや受験体験記は参考になりますが、情報が古かったり、特定の年度や地域に限定された内容である場合もあります。
そのため、「公式発表の最新情報を基準にする」ことが何よりも大切です。

また、募集要項だけでなく、受験資格・試験方式・昇任制度・初任教養など、関連するページも合わせて確認しておくと全体像がつかめます。
疑問点がある場合は、遠慮せずに採用担当窓口に問い合わせるのも有効です。誤った情報に基づいて出願するリスクを防ぐことができます。


まとめ:名称ではなく「中身」で選ぶことが、確実な第一歩になる

  • 名称は地域ごとに異なるが、「学力水準の目安」を示しているにすぎない。

  • 試験の基本構成(筆記・作文・面接・体力)は全国的に共通している。

  • 採用後は警察学校で基礎を学び、現場へ。勤務内容は区分で固定されない。

  • 昇任は実力主義で、学歴によるハンディは設けられていない。

最後にもう一度――“名称よりも中身”で選びましょう。
自分の学力や得意分野、ライフプランに合う入口を見極め、公式の最新情報を確認して、確実な一歩を踏み出してください。
警察官という職業は、地域社会の安全を守る大切な使命を担う仕事です。あなたの努力と情熱が、未来の街を支える力になります。

You may also like

You cannot copy content of this page