消防士になるにはどうする?大学生から消防士の目指し方とは

by GAWA_K

火災現場に駆けつけて消化活動をする消防士は、消防士を題材とした映画やドラマなどの影響もあり、憧れている人も少なくないでしょう。

では、架空の話ではなく現実の世界で消防士になるには、どのような方法があるのでしょうか。今回は、消防士になるための手順、消防士のメリット、消防士に向いている人のポイントなどについて、詳しく解説していきましょう。

 

消防士ってどんな仕事?

消防士というと、ホースを持って火事を消化するイメージがありますが、実は消防士の業務はそれだけでなく、多岐に渡ります。では、消防士の仕事内容について、次より紹介しましょう。

 

火災現場での活動

消防士の代表的な業務が火災への対処です。火災の通報を受けたらすぐに出動しなくてはならないため、消防署には常に人員が待機しています。

消防車ですぐに火災現場に駆けつけたら、火災の消化活動、人命救助、周辺の処理(見物人・周辺の障害物への対処)などを行わなくてはいけません。実際の活動だけでなく、その日の風向き・出火の状況などを見極める判断力や知識も必要とされます。

 

救急活動

火災以上に消防士が行う業務のなかで多いのが救急活動です。けが人・急病人が出て通報があった場合、すぐに現場に駆けつけてその場で応急処置を行い、一刻も早く病院へけが人・急病人を搬送します。

救急活動は、隊長・隊員・機関員(救急車の運転手)という3人でチームを組み行動する決まりです。それぞれ講習を受講して、救急のための確かなスキル・知識を身につけた救急員でないと、この救助活動は行ってはいけません。

チームのメンバーは救急救命士の資格取得者もいるため、心肺停止した急病人に対して救急救命の処置を行うことも可能です。ただしこの処置は医師の指示を受けなくてはいけません。

 

事故・災害の救助活動

火災現場では消化活動だけでなく現場にいる人の救助活動も行いますが、それは火災だけではありません。消防士は、交通事故・災害でけがをした人・土砂崩れ、建物の倒壊などでその場から動けなくなった人の救助活動も行います。

この業務は消防士であれば誰でも行えるわけではなく、消防署内にはある救助隊および特別救助隊に所属して、業務に適した訓練を受けた隊員でないと行えません。

さらに高度な訓練を受けた隊員は高度救助隊・特別高度救助隊という隊に選抜されて、大規模な災害が起きた際に活動します。

特別な隊は、スキル・知識・フィジカルの屈強さなど、ハイレベルなスペックが要求されるので、誰でも任せられるわけではありません。

 

防災活動

消防士は、火災や災害などが起きた際に活動するので、それらが起きない場合は各消防署で待機しますが、火災・災害がなければ仕事がないわけではありません。民間施設や住居などの環境が正しい防災・防火の対策がされているかどうか、検査・指導することも消防士の業務です。

また、会社や学校などに出向いての予防対策の指導、防災訓練の実施、過去に起きた火災の原因の調査および調査結果を行政に反映させる活動なども行っています。

 

デスクワーク

消防署に所属している人はすべて現場活動を行うわけではなく、消防署に常駐して事務業務のみを行う人もいます。通報の電話対応、各種必要書類の作成、給与や経費などの経理・計算などが、主な業務です。

 

消防士になる方法

消防士は地方公務員に分類されるので、消防士を目指す場合、全国の自治体が行っている採用試験を受験して合格しなくてはいけません。また、採用試験に合格したあとも、専門の学校に入学して訓練を受ける必要があります。

では、消防士になるためには、どのような手順を踏まなくてはいけないのか、次よりその手順を説明しましょう。

 

どのタイプの採用試験を受けるか選択する

採用試験は、受験希望者の学歴によって区分されているため、自身の学歴に合った採用試験を選択しなければいけません。採用試験の種類は以下の通りです。

  • 高卒
  • 大学および大学院卒
  • 短期大学・専門学校卒

学歴以外にも受験資格があり、その資格は各自治体によって違いがあります。以下より東京消防庁を例に受験資格をみてみましょう。

  • 年齢:18歳〜29歳
  • 身長/体重:160㎝以上/50㎏以上
  • 胸囲:身長の2分の1以上
  • 視力:両眼で0.7以上、一眼で0.3以上。赤・青・黄色の色彩識別ができる
  • 聴力:聴力検査で「正常」の結果が出ること
  • 肺活量:3,000㏄以上

身長や体重、胸囲などはあくまで「おおよそ」なので、身長160cmが条件で受験希望者が158cmであっても問題ありません。

それでも受験資格は重要な項目なので、受験を希望する自治体が提示している条件を、しっかりと確認しましょう。

 

採用試験を受験→合格

採用試験は、各自治体によって違いがありますが、全国の消防士採用試験は、地方公務員の採用試験に準ずる形で実施されます。

東京消防庁の試験内容を例にみてみましょう。

  • 1次試験:教養試験、論文(作文)試験、適性検査
  • 2次試験:身体、体力検査、口述試験(個人面接)

以上のように1〜2次に分かれて実施されるのが通例です。消防士というと現場での業務が多いためフィジカル面が重要視されていますが、体力だけあれば簡単に合格できるわけではありません。教養や論文などの筆記試験、個人面接などの口述試験もあるため、教養やコミュニケーションスキルも重要です。

体力に自信があるから他の試験対策はやらなくていいだろうと決めつけずに、試験に備えてあらゆる方面の準備を怠ってはいけません。

採用試験に合格した場合、すぐに消防署に就職して業務を開始するわけではなく、合格後は消防学校に入学して、研修を受けることが義務になっています。

 

消防学校に入学

採用試験に合格すれば「消防士」として任命されますが、実際の業務を行う前に消防学校に入学して、消防の基礎知識やスキルなどの初任教育を受けることになっています。

全国各地域にある消防学校は、それぞれ独自の決まり・カリキュラムがあり、教育方針は全国共通ではありませんが、教育期間はおおよそ半年ほどです。

教育期間中は寮生活をする決まりになっており、この期間をクリアしないと現場での業務を行うことはできません。ただし、試験に合格した時点で消防士に任命されているため、給与は支給されます。

消防学校で受ける授業は、火災に関する知識、法律などを学ぶ座学、心肺蘇生方法や消化および機器使用のスキルなどを学ぶ実習の2種類です。

また、寮では当直も行います。当直制度を行う理由は、消防士の業務は24時間体制で交代制となっているので、それを体験してもらうためです。

学校が決めたカリキュラム・決まりに従って学校の授業を受けて、晴れて卒業できたら、本格的な消防士のキャリアがスタートします。

 

消防士のメリット

一歩間違えると生命に関わる過酷な仕事と思われている消防士ですが、実はいくつものメリットがあります。次より、消防士という仕事に就いた際のメリットについて、詳しく説明しましょう。

 

高待遇

消防士は地方公務員なので、いつの時代でも安定しています。経済の浮き沈みによって不況の波が来たとしても、公務員はその影響を強く受けることはなく、リストラされる心配もありません。

また、給与の平均値も高く、民間企業の平均よりも上回っています。その分、危険な現場に出向く、当直があるなどの面もありますが、休日自体は多いため忙しくて休めない・有給が使えないといったこともありません。

また、地方公務員は転勤があったとしてもその地域内での転勤となります。他の仕事のように転勤で遠くに引っ越すといったこともなく、自分の好きな地域で長期にわたって働くことが可能です。

 

自分の仕事にプライドが持てる

消防士は、人命救助・社会貢献といった立派な業務です。そのため、自分が行う現場での業務をはじめ、火災防止のための指導・啓蒙活動、日頃から行っている訓練に至るまで、「自分がやっていることは世の中の役に立っているんだ」というプライドを持って行えます。

強いプライドを持って日頃から数々の業務を行っていれば、それだけ自分の自信にもつながり、それにより多くの人に尊敬される存在となれるでしょう。

 

常に健康でいられる

消防士は、火災や災害の現場に立ちあって人命救助を行う業務なので、体力・屈強な身体を維持しなくてはいけません。

そのため、常に訓練や自主的な摂生などを行い、いつでも火災・災害の現場に行けるように、健康体をキープする必要があります。いわば健康で屈強な身体づくりも消防士の業務の一つといっていいでしょう。

そのため、消防士の業務を行っていれば、病気知らず・けが知らずの健康体でいられます。身体も常に引き締まった状態をキープできるので、周囲から尊敬の視線をもらえるでしょう。

 

日常生活でも非常事態に対応できる

消防士は、火災・災害などの非常事態に対する知識・対処方法のスキルなどを持っていないとできない業務です。そのため、消防士の業務以外の私生活でも、もし非常事態が起きても冷静に対処することが可能です。

非常事態により周囲がパニックになっても、現状を見極めて自身の行動および周囲への指示を的確に行えて、被害を最小限に抑えられるでしょう。

 

消防士にはこんな人が向いている

生活が安定している公務員だから消防士になりたい、と安易に考えている人もいるかもしれませんが、なかには消防士が向いていない人もいます。

では、消防士に向いている人、消防署が求めている人材はどのようなタイプなのか、次より向いているタイプについて説明しましょう。

 

体力に自信がある人・スポーツ経験者

消防士になるための必須条件といえば、体力・頑丈な身体です。場合によっては大規模な火災・災害が起きた過酷な現場に行くこともあり、そのような現場では何よりも体力が必要となります。体力に自信がある人であれば、現場で大きな活躍ができるでしょう。

また、スポーツを通じてさまざまな経験をした人も、消防士に向いているでしょう。スポーツにより身体が鍛えられていることもありますが、スポーツ経験者が経験していることは、厳しい上下関係です。

消防士の世界は厳しい上下関係によって成り立っており、その厳しさがあることによって、人の命に関わる重要な業務が遂行できます。

体育会系の厳しい上下関係により礼儀やマナーを叩き込まれている人は、消防士の世界に飛び込んでも違和感なくすぐに溶け込めるでしょう。

 

人の役に立つことをしたい

人命救助・危機管理・危機勃発のための予防など、重要な業務を行って、世の中の役に立ちたいという思いが強い人は、消防士に向いているでしょう。

自分自身の利益ではなく、人のため・世の中のためという思いが強い人であれば、大きな火災・災害といった怖い現場に遭遇しても、怖がらずに挑めて立派な業務を遂行できるでしょう。

 

まとめ

消防士は、危険な状況に身を置く危険な仕事というイメージがあります。確かにそのような業務を行う場合もありますが、消防士の業務はそれだけでなく、日頃からの災害防止のための指導・防災訓練の指示など、多岐に渡るのが、消防士の実情です。

また、過酷な労働環境だと思われている消防士ですが、実は休みが多い、給与が民間企業より高い、福利厚生も充実しているなど、高待遇が用意されています。

今回は、消防士になるための手順、消防士の具体的な業務内容、消防士のメリット、消防士に向いている人など、消防士に関するいくつかのポイントについて、解説してきました。

消防士への就職・転職を検討している人は、今回の記事を参考にしてもらえたら幸いです。

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