アクチュアリーとは何か?学べることや就職、強みなどとともに

アクチュアリー資格取得のメリット、資格試験の概要などを解説

by GAWA_K

生命保険や損害保険、企業の年金など金融に関わる仕組みは、複雑な算定が必要であり、また膨大な数字の処理をしなくてはならないため、一般人では簡単に行なうことができません。

そのような難しい業務を一任してくれるのが、アクチュアリーという専門職です。それほど馴染みのない名称であるアクチュアリーとは、具体的にどのような業務内容なのでしょうか。

今回は、アクチュアリーの仕事内容、資格取得のメリット、資格取得のための方法などについて、詳しく解説していきましょう。

 

アクチュアリーとは

そもそもアクチュアリーとは、何を指す言葉なのでしょうか。アクチュアリーの定義、対応可能な業務内容について、以下より説明しましょう。

アクチュアリーの定義

アクチュアリーとは、保険年金、リスクマネジメントなどに関わる数理業務の専門家です。アクチュアリーという名称は、そのような数理業務を行なう人という意味合いもありますが、正確にいうと日本アクチュアリー会に所属している正会員を指します。

日本アクチュアリー会とは、明治32年(1899年)に創立された、保険数理を扱うことを目的とした公益法人です。この機関は、保険業法上に従い、保険数理などの専門知識を持った人材の育成などを行なっています。

日本アクチュアリー会の正会員になるには、会が主催している試験の合格、研修の受講完了を達成することが必須です。正社員=アクチュアリーの資格取得者とみなされ、数理に関する高い専門性のある知識・スキルを持っている証明になります。

アクチュアリーの業務内容

アクチュアリー資格取得により得た知識・スキルが活かせる分野は、次の通りです。

生命保険

長期にわたる契約者との関係を維持し、会社全体の収支分析・適正な保険料算定を行なう、また将来の保険金や給付金の支払いにおける準備金の評価などを行なう

損害保険

損害リスクの発生頻度および規模を統計的に分析、時代ごとの環境・ニーズ変化などへの対応、商品開発・保険料設定、あらゆる算出などを行なう

年金

年金数理の専門知識を活用して企業年金制度の課題(制度設計・掛金算出および掛金、積立水準の検証、退職給付の債務評価など)に対応

リスクマネジメント

数理モデルの作成スキルを駆使して、統合的・包括的・戦略的な視点でリスク管理を行なう

その他

数理的な分析・判断スキルはあらゆる分野で応用可能、海外にもアクチュアリー会は複数存在するため、グローバルな業務展開も行なえる

 

アクチュアリー資格取得のメリット

アクチュアリー会の正会員=アクチュアリー資格取得者になると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。次よりメリットを紹介しましょう。

一定水準の実力を持つ人材と認識

専門性の高い知識・スキルを持っているアクチュアリー人材は、その人材の年齢に関係なく企業の重要なポジションから意見を求められることもあります。実務を通じて経営面の知識なども吸収していけば、さらに重要な業務を任せてもらえるでしょう。

海外の認知度が高い

海外進出に力を入れている企業で働く場合、アクチュアリー資格取得者というだけで入国審査がスムーズになることも多く、資格取得をしているだけで海外ではステイタスを得られます。海外での新規事業の立ち上げなどにも重宝されるでしょう。

幅広い人脈が持てる

アクチュアリー正会員が所属するアクチュアリー会には、さまざまな業務に関わっているアクチュアリーが集結しています。そのような人材と積極的に交流することによって、業務の幅は広がり国内・海外問わず多種多様な人脈形成が実現するでしょう。また、そのような人材との交流で、新たな知識を得ることも可能です。

 

アクチュアリー資格取得の手順

アクチュアリー会・正会員=アクチュアリー資格取得を達成するためには、以下の手順を踏む必要があります。

  1. 第1次試験(合格すれば準会員)
  2. 第2次試験
  3. プロフェッショナリズム研修(初期教育、準会員であれば受講可能)

以上のように第1次・2次試験の合格、研修の受講、すべてをクリアすれば、晴れて正会員になれます。1次・2次の合格を達成する期間の平均は2年ほどなので、決して簡単に正会員になれないのが、アクチュアリーの特徴です。

 

アクチュアリー試験の概要

アクチュアリー資格試験の詳細について、以下より説明しましょう。

受験資格
  • 学校教育法に基づく大学・短期大学を卒業した者
  • 4年制大学に在籍で大学3年生以上の者(62単位以上の単位を修得した物)
  • 高等専門学校を卒業した者
  • 学士資格を有しない大学院生の者
  • 外国の大学を卒業した者
  • 保険・年金・などの業務に3年以上携わった者

上記のうち1つを満たしていること、それを証明する証明証の提出が受験資格です。第2次試験は第1次試験に合格しなければいけません。

受験料

1科目10,000円(日本アクチュアリー会の法人会員関係者であれば1科目7,000円に割引)

試験会場
  • 東京:TOC五反田
  • 大阪:天満研修センター
試験日程
  • 受験資格審査受付:7月〜9月
  • 受験受付期間:10月中
  • 試験期間:1次・2次ともに12月の数日間
合格発表

試験翌年の2月下旬(日本アクチュアリー会のWEBページにて発表、発表後には郵便の送付もあり)

 

アクチュアリー試験の試験内容

アクチュアリー試験は、第1次・2次があります。それぞれの試験内容を次より説明しましょう。

第1次試験の内容

アクチュアリー第1次試験はアクチュアリー業務の基礎を確認するための基礎科目です。実務的な内容である第2次試験を受けられるための、基礎的知識があるのかどうかを判定します。試験内容は次の5科目です。

  • 数学(確率)
  • 生保数理(基礎および応用)
  • 損保数理(基礎および応用)
  • 年金数理(年金財政の基礎)
  • 会計・経済・投資理論(基礎)

試験の範囲は教科書に掲載された情報のみからの出題で、マークシート方式で行われます。試験に合格したら「準会員」の称号が与えられて、第2次試験の受験権利が得られるという流れです。

第2次試験の内容

第1次試験で出題された基礎的な知識を活用して、実務を行なうための問題解決スキル・専門的知識を持っているかどうか判定されるのが、第2次試験です。

第2次試験は、生保コース・損保コース・年金コースの3つのコースから1つを選択して受験する方式で、コースで用意された2科目に合格する必要があります。その3つのコース・科目は、以下の通りです。

  • 生保コース(生保1・生保2の2科目)
  • 損保コース(損保1・損保2の2科目)
  • 年金コース(年金1・年金2の2科目)

アクチュアリー試験は、第1・2次試験ともに1回の受験で必須科目すべてに合格する必要はありません。今年1科目だけ合格、来年はさらにもう1科目、といった具合に長期にわたっての計画的な挑戦も可能です。

試験の後は研修の受講が必須

アクチュアリー資格は、試験に合格しただけでなく、プロフェッショナリズム研修という初期教育の研修を受講しなくてはいけません。試験合格・研修とすべてが完了すれば、晴れてアクチュアリー正会員=アクチュアリー資格取得者になれます。

プロフェッショナリズム研修は、アクチュアリー会の準会員になれば受講できるため、第1次試験合格→研修→第2次試験を受験といった流れも可能です。

 

アクチュアリーは将来性がない?

ネット上を見ると「アクチュアリーは将来性がない」「目指すのはやめた方がいい」という意見が一部で見られます。このようなネガティブな意見が出てくるのは、以下のような理由があるからです。

  • 試験内容が難問過ぎる
  • AIに仕事の大半を取られる

この2つの問題について本当にそうなのか、以下より説明しましょう。

試験内容が難問過ぎる

アクチュアリー試験は確かに難問であり、試験にすべて合格して正会員になるのに長くて8年かかるといわれています。それだけ長期にわたっての挑戦となると、モチベーションの維持が大変であり志半ばにして心が折れてしまうパターンも少なくありません。

しかし逆に言えば、それだけアクチュアリー業務に対応できる人材は慢性的な人手不足であり、晴れて正会員になれたら貴重な人材として、多くの仕事を受注できます。

また、保険や年金といった分野は、いつの時代でも普遍的なものなので、将来消えることはないでしょう。試験が難解な分、それをクリアすればどんな時代でも仕事に困ることはないといえます。

AIに仕事の大半を取られる

アクチュアリーに限らず、今後あらゆる業務においてシェアが広がると予想されているのが、AIです。保険や年金といった膨大な数字の扱い・算出を行なうアクチュアリー業務も、AIに代わってしまうのではと危惧されています。

確かに、アクチュアリー資格取得者が手がける保険や年金の統計・分析は、AIのほうが正確に行なうことが可能です。しかし、アクチュアリーの業務内容はそれだけではありません。

アクチュアリー業務の一つに、複雑な統計や分析、保険の新商品を、顧客に向けていかにわかりやすく説明することもあります・そのためには、ロジカルな思考能力に加えて、いかにそれを平易に言語化して顧客に伝えられるかという、トーキング・コミュニケーションスキルも必要です。

誰と対峙しても相手方が納得のいくトークスキルができるかどうかによって、アクチュアリー資格取得者の価値が左右されるでしょう。そして、そのような高度なコミュニケーションスキルは、AIにはできない分野です。

 

アクチュアリーが向いている人

アクチュアリー資格を目指そうと思っても、実際には自分の資質がアクチュアリーに向いていない場合があります。この場合、無駄な時間を過ごしてしまう羽目になるため、どのような人が向いているのか知っておきましょう。アクチュアリーに向いている人はどんな特徴があるのか、次より紹介します。

昔から算数・数学が得意科目の人

昔から計算が得意で簡単に暗算ができる、学校の数学・算数のテスト結果が良い人は、数字に強いためにアクチュアリーに向いています。算出ミスをすることなくスムーズに業務をこなせるでしょう。

コミュニケーションスキル・英会話スキルがある

先述した通りアクチュアリーは、複雑な保険・年金に関する仕組みを、わかりやすく相手方に伝えるスキルも重要です。また、英語が堪能であれば、アクチュアリーの知名度が日本より高い海外での活躍も行なえます。

人と話すのが得意な人・英会話スキルに自信がある人であれば、アクチュアリー業務に向いているといえるでしょう。

責任感・根気のある人

アクチュアリー業務は、ちょっとしたミスで多大な損害が生じる可能性があります。また、アクチュアリー会の正会員になるには数年の期間が必要です。日頃から強い責任感のある人・根気のある人であればアクチュアリーとして良い仕事が行なえるでしょう。

まとめ

膨大な数字を前に統計や分析を行なうアクチュアリー業務は、国家資格でないながらも難関といわれている資格です。アクチュアリーとして一人前の業務を任せられるようになるには、相当な時間と労力を費やさなくてはいけないでしょう。

しかしその難関をクリアしてアクチュアリーとして認定された場合、普遍といわれている保険や年金に関する業務を、一任される役割を得られます。

安定した将来性のある仕事に就きたい人は、選択肢の一つとしてアクチュアリーの存在を覚えておくといいでしょう。

 

 

「日本経済大学」では、留学生の就職活動の支援を目的とした、留学生対象の専門ゼミを開講しています。そこでは、BJTビジネス日本語能力テストの受験を推奨し、学習も行っています。

■日本経済大学(都築学園グループ / (学)都築育英学園)

都築学園グループは、「個性の伸展による人生練磨」を建学の精神とし1956年に設立された大学です。2018年に開学50周年を迎えた日本経済大学は、経済・経営の実学に特化した2学部6学科17の専門コースを持っています。日本有数の、留学生を抱える国際色豊かな大学です。

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