音楽学部を志望する受験生にとって、面接試験は技術試験や筆記試験と並んで重要な選考要素のひとつです。演奏や作曲などの実技力はもちろん、音楽に対する姿勢や将来の目標、入学後の学びに対する意欲など、さまざまな観点から評価される面接には、しっかりとした準備が必要です。
今回は、音楽学部の面接に向けた心構え、よく聞かれる質問、回答のコツ、緊張への対処法、そして学部別・分野別の傾向などを解説します。
1. 面接の目的とは何か?
音楽学部の面接は、単なる受験の一環ではなく、受験生と大学側の「対話の場」です。志望動機や学びへの意欲、将来の展望などを通じて、大学が大切にする教育理念に適合しているか、また学生としての素養が備わっているかを総合的に判断します。
また、音楽学部では、単に演奏技術や作曲力だけでなく、学問としての音楽を探究しようとする姿勢、他者との協働性、継続的な学習へのモチベーションなども重視される傾向があります。
1. よく聞かれる質問とその意図
面接では以下のような質問が多く見られます。それぞれの質問には、大学側の明確な意図が存在します。
1-1 志望動機に関する質問
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「なぜ本学の音楽学部を志望したのですか?」
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「他の音楽大学ではなく、なぜこの大学なのですか?」
目的:その大学の教育方針や特色、カリキュラムを理解し、自分の目標と合致しているかを確認したいという意図があります。
対策:大学の公式サイトやパンフレットをよく読み、どのような授業や先生に惹かれたのか、将来の目標と大学の教育内容がどう関係しているかを具体的に説明しましょう。
1-2 音楽との関わりに関する質問
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「これまでの音楽歴について教えてください」
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「最も影響を受けた音楽家や作品は何ですか?」
目的:音楽に対する熱意や個人的な経験、価値観を理解しようとしています。
対策:単に年数や経歴を並べるのではなく、どんな音楽経験が印象に残っているか、何を学んだかを語ることが大切です。
1-3 将来の目標についての質問
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「将来どのような音楽家・職業人になりたいですか?」
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「音楽を学んだ先に、社会とどう関わっていきたいですか?」
目的:受験生が長期的な視野を持っているか、大学での学びをどのように生かそうとしているかを確認しています。
対策:職業名だけでなく、「なぜそうなりたいのか」「どのように社会に貢献したいのか」を明確に伝えましょう。
1-4 一般的な自己理解を問う質問
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「あなたの長所と短所を教えてください」
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「最近印象に残った出来事は?」
目的:自己認識の深さや客観的な自己評価、社会性を見ようとしています。
対策:具体的なエピソードを交え、単なる抽象的な表現ではなく、自分の言葉で語ることが重要です。
2. 回答のポイント
面接では、決して“正解”を答えることが目的ではありません。自分の考えや経験を、自分の言葉で誠実に伝えることが重要です。以下に回答の際のポイントをまとめます。
2-1 自分らしさを大切にする
面接では型にはまった優等生的な回答よりも、その人ならではの経験や想いが伝わる回答が評価されます。等身大の自分で向き合いましょう。
2-2 結論から述べる
特に緊張している場面では話が長くなりがちです。まず結論を述べ、その後に理由やエピソードを加えることで、面接官に伝わりやすくなります。
2-3 具体的なエピソードを交える
「頑張り屋です」などの抽象的な表現よりも、「中学の部活で…」など具体的な経験談を交えた方が説得力が増します。
2-4 「なぜ」を深掘りする
志望動機や将来の夢などには、必ず「なぜそれを目指すのか?」という視点を入れることで、より深みのある回答になります。
3. 面接当日の心構え
3-1 身だしなみと礼儀
第一印象は非常に大切です。服装は清潔感があり、過度に華美でないものを選びましょう。また、入室時の挨拶、姿勢、目線なども含めて、基本的なマナーを押さえておきましょう。
3-2 緊張との向き合い方
面接で緊張するのは自然なことです。大切なのは「緊張をなくすこと」ではなく、「緊張していても話せる自分」を作ることです。事前に模擬面接を行う、質問への答えを紙に書き出すなどの準備が有効です。
3-3 相手の話をしっかり聞く
一方的に話すのではなく、面接官の質問やリアクションに耳を傾け、対話の姿勢を忘れないようにしましょう。
4. 分野別アドバイス:演奏・作曲・音楽学
音楽学部には、演奏系、作曲系、音楽学系など、分野によって求められる資質が異なります。
4-1 演奏系(声楽・器楽)
演奏系では、自己表現力や人前での振る舞いも重視されます。演奏に込める想いを語る準備や、演奏に関する質問にしっかり答えられるようにしましょう。
例:「この曲を選んだ理由は?」「どのように練習を工夫しましたか?」
4-2 作曲系
作曲系では、音楽的な発想力や、自分の作品に対する分析力が求められます。自分の作品の特徴、意図、使用した技法などを簡潔に説明できるようにしておきましょう。
例:「どのようなコンセプトで作曲しましたか?」「影響を受けた作曲家はいますか?」
4-3 音楽学系(音楽理論・音楽史など)
音楽学系では、論理的思考や読書経験なども評価される場合があります。日頃から音楽に関する書籍を読み、興味のある研究テーマを持っておくと良いでしょう。
例:「最近読んだ音楽関連の本は?」「興味のある音楽研究のテーマはありますか?」
5. 面接以外に大切なこと
面接の出来が入試結果をすべて左右するわけではありません。実技試験、筆記試験、書類などと合わせて、総合的に判断されます。どの要素も手を抜かずに準備することが、合格への近道です。
また、音楽学部は個性を重視する学部であるため、他者と比べるのではなく、自分自身の成長や可能性を信じて取り組むことが大切です。
おわりに
音楽学部の面接対策には、入念な準備と冷静な自己分析が欠かせません。大切なのは「上手に答えること」ではなく、「自分の言葉で語ること」です。どのような経験をしてきたのか、なぜ音楽を学びたいのか、将来どんな自分でありたいのか──その思いを正直に伝えることが、何よりの対策になります。
音楽学部を目指す皆さんにとって実りある面接準備の参考となることを願っています。