総合人間学部 志望理由の考え方ガイド

学びの特徴・自己分析・将来像まで

by info@remi.website

高校生や既卒生が「なぜこの学部で学びたいのか」を言語化する際、最初にぶつかる壁が“理由の整理”です。総合人間学部 志望理由を考えるときは、興味の広さをただ並べるのではなく、「社会や自分の課題」と「学びの方法」を結び付けて、入学後の具体的な行動計画と将来像にまでつなげていくことが大切です。考え方の手順・チェックポイント・参考例をわかりやすく整理します。


1. 総合人間学部とは

総合人間学部は、人間を取り巻く問題を学際的(ディシプリン横断)に探究する学部です。人文科学・社会科学・自然科学の知を行き来しながら、複合的なテーマ――たとえば少子高齢化、地域活性、ウェルビーイング、教育、ダイバーシティ、テクノロジーと倫理、環境と経済の両立など――に対して、複数の視点と方法を用いてアプローチします。
特徴は以下のように整理できます。

  • テーマ起点の学び:関心領域(例:地域福祉×データ、教育×心理、環境×ビジネス)から逆算して科目を組み合わせる。

  • 方法論の横断:質的調査(インタビュー、フィールドワーク)と量的分析(統計、データ分析)を往復する。

  • 協働・対話:多様な背景の学生や地域・企業・NPO等と連携し、課題を具体化・検証する。

  • 自己形成:自分の関心の変化を前提に、カリキュラムを柔軟に設計する。

  • 実装志向:成果をレポートだけで終わらせず、提案・実験・発信へつなげる。


2. 学びの特徴

  1. 学際性:一つの正解を前提とせず、複数の知を組み合わせて考える訓練を行います。

  2. 探究プロセス重視:問題の定義、仮説生成、検証、振り返りというプロセスを回すこと自体が学びの核です。

  3. 方法の二刀流:エスノグラフィのような質的手法と、アンケート・公開データ分析などの量的手法を併用します。

  4. 社会との接続:地域調査、プロジェクト学習、インターンシップ、サービスラーニングなど、学外と往復します。

  5. 表現と発信:論述・プレゼン・ファシリテーション・可視化など、伝える力も評価対象になります。


3. 志望理由の代表的な方向性

志望理由は“型”を意識すると整理しやすくなります。以下は中立的に整理した例です。自分の経験や関心に最も近いものを土台にし、具体化しましょう。

  • A:複合課題に挑みたい
    背景:一つの学問だけでは説明しきれない社会課題に関心。
    学び方:社会学で現状把握、心理学で動機理解、統計でデータ検証、倫理学で規範検討…のように横断。
    将来像:行政・NPO・企業の企画職などで政策・事業を設計。

  • B:広い関心を統合したい
    背景:文学も教育も福祉も好きで、まだ狭く絞れない。
    学び方:入門を幅広く履修しつつ、共通テーマ(例:子どもの学び)で科目を束ねる。
    将来像:教育関連、出版・メディア、人材・コミュニティ支援など。

  • C:方法論を横断的に身につけたい
    背景:質・量の両方の調査スキルを獲得したい。
    学び方:フィールドワーク+データ分析+発表を繰り返す。
    将来像:リサーチ、コンサル、マーケティング、政策評価など。

  • D:社会実装志向(企画・起業・提言)
    背景:課題解決を提案やプロダクトに落とし込みたい。
    学び方:デザイン思考、プロジェクト型学習、評価指標づくり。
    将来像:事業開発、公共政策、ソーシャルビジネス。

  • E:国際・地域連携
    背景:移民・観光・地域福祉・災害対応など境界領域に関心。
    学び方:現地調査、比較研究、多言語・異文化間コミュニケーション。
    将来像:自治体・国際機関関連、地域コーディネーター、ツーリズム等。

  • F:自己形成・学び直し
    背景:人間や社会への長期的関心に基づき、幅広い教養と実践力を段階的に育てたい。
    学び方:学修計画の定期見直し、ポートフォリオで可視化。
    将来像:進路は幅広い。スキル組合せ次第で多様な道へ。


4. 自分の志望理由を組み立てる4ステップ

Step1:原体験の棚卸し
・印象に残った出来事/課題感(ボランティア、部活動、アルバイト、家族の体験、読書など)。
・そこで感じた疑問やモヤモヤを短文で書き出す。

Step2:課題の言語化(仮説)
・「誰の、どんな状況を、なぜ改善したいのか?」を一文で。
・既存の説明で足りない“すき間”を想像する(例:数字は示されているが、当事者の声が見えない など)。

Step3:学びの設計
・必要な視点(人文/社会/自然)と方法(質・量・実践)をマトリクスにして科目や活動に対応付ける。
・学内外の機会(ゼミ・プロジェクト・実習・インターン)を具体名ではなく“種類”で示す。

Step4:成果と将来像
・入学後1~2年で身につけたい力、3~4年で挑戦したい課題、卒業後の活かし方を段階で描く。
・“職種の名前”だけでなく“役割”や“貢献の仕方”を述べる。


5. 志望理由に盛り込みたい要素

  • テーマの一貫性:関心と課題がつながっているか。

  • 横断の必然性:なぜ単一領域ではなく横断が必要なのか。

  • 方法の具体性:調査・分析・実践の“やり方”が示されているか。

  • 行動計画:入学後に何をどの順で行うかが見えるか。

  • 成長指標:どんな力がどの状態になれば“できた”と言えるのか。

  • 社会との接点:誰と協働し、誰に届けるのか。

  • 等身大:背伸びしすぎず、今の自分からの連続性があるか。


6. 書き方の例とNG例

NG例:「幅広く学べるから。将来に役立ちそうだから。」
漠然としており、横断の必然性や具体的な計画が見えません。

改善例
「地域の高齢者の外出機会が少ないことに課題を感じています。現状把握には統計データの分析が必要ですが、数字だけでは本人の心理や家族関係は捉えきれません。質的インタビューと量的分析を往復し、移動支援策の効果を検証するために、学問横断の環境で方法論を体系的に学びたいと考えています。入学後は、調査設計・倫理・データ分析の基礎科目を履修し、地域連携のプロジェクトに参加して施策提案までつなげる計画です。」

NG例:「とにかく人の役に立ちたい。」
善意は大切ですが、課題設定と方法が不明確です。

改善例
「外国にルーツを持つ児童の学習支援を続ける中で、語学力だけでなく学校・家庭・地域の連携が鍵だと感じました。教育学・社会学・心理学を組み合わせ、支援の実効性を現場で検証するため、学外連携の機会がある学際的な学びを志望します。」


7. 学び方の具体例

  • フィールドワーク型:現地観察→半構造化インタビュー→仮説の再構成→提案。

  • データ活用型:公開データ収集→可視化→統計・機械学習による探索→インサイト抽出。

  • デザイン思考型:ユーザー理解→アイデア発散→プロトタイピング→検証・改善。

  • 発信・対話型:調査結果のレポート化→プレゼン→ワークショップ設計→合意形成。


8. 将来の進路と身につく力

進路は多様です。公的機関、教育・人材、福祉・医療関連の支援職、NPO・国際協力、企業の企画・広報・マーケティング、コンサルティング、メディア・調査、地域コーディネーター、起業などが考えられます。
身につく力は、課題設定力、情報収集力、論理的思考、共感と対話、データリテラシー、プロジェクト遂行力、倫理的判断など。特定の進路が自動的に保証されるわけではありませんが、これらの力を実証的な成果(レポート、発表、企画提案、ポートフォリオ)として示すことで、進路選択の幅が広がります。


9. よくある質問(FAQ)

Q1:文系か理系か、どちらに近い?
A:扱うテーマにより変わります。重要なのは“方法の適材適所”。理系的手法(データや実験)も、人文・社会の視点(歴史・文化・制度)も必要に応じて用います。

Q2:就職に不利では?
A:一概に有利・不利は決まりません。評価されるのは、課題を定義し、データと現場で確かめ、成果を伝える力です。学びの成果を具体物として示す準備が鍵になります。

Q3:他学部との違いは?
A:特定分野を深掘りする学部に対し、複数分野を横断して“テーマを軸に束ねる”点が特徴です。深さと広さはトレードオフではなく、段階的に両立させます。

Q4:入学前に準備したいことは?
A:読書・要約・論述の反復、基礎統計と情報リテラシー、英語・第二言語の継続、地域や社会課題に触れる実体験。いずれも特別な才能ではなく、継続で伸びます。


10. 志望理由の参考例(そのままの使用は避け、必ず自分の体験や経験に置き換えて考えてください)

例1:地域福祉×データの視点
「商店街での見守りボランティアを通じ、高齢者の外出が減ると買い物や交流の機会が失われ、健康にも影響が出ると感じました。現状の把握には移動履歴や購買データなど量的情報が有効ですが、外出をためらう心理や家庭内の事情は質的な聞き取りが不可欠です。学際的な環境で、質的・量的の両手法と倫理を学び、地域の方々と協働しながら、外出支援の施策を検証・提案する力を養いたいと考えます。入学後は基礎統計と調査設計を履修し、小規模な実証プロジェクトから始め、3年次には自治体や商店街と連携した評価研究に挑戦します。将来は行政や企業の立場から、生活と健康を両立させるまちづくりに関わりたいです。」

例2:教育×多文化共生の視点
「学習支援で出会った外国にルーツを持つ中学生は、語学だけでなく学校や家庭、地域コミュニティとのつながりに課題を抱えていました。教育学・社会学・心理学を横断し、学校外の学びの場や同世代のピアサポートが学習意欲に与える影響を、インタビューとアンケートの往復で確かめたいと考えています。入学後は発達や学習理論の基礎を固め、地域と連携するプロジェクトに参加して実証し、成果を提言として発信します。将来は教育支援や人材育成の現場で、多文化環境でも安心して学べる仕組みづくりに携わります。」

例3:環境×ビジネスの視点
「環境配慮の商品が“良いこと”として語られる一方で、価格や使い勝手との折り合いがつかず選ばれにくい現実に疑問を持ちました。消費者心理の理解、サプライチェーンの知識、ライフサイクル評価などを組み合わせ、生活者に無理のない選択肢を提案する方法を探究したいです。学内では環境倫理・経済・データ分析を横断して学び、学外では小売や地域事業者との協働で実験的な販促や行動変容の施策を検証します。将来は事業開発やマーケティングの立場から、環境と利便を両立させる製品・サービス設計に貢献したいです。」


11. まとめ(書くときの合言葉)

  • なぜ:自分の原体験から導かれる“問い”は何か。

  • どのように:横断的に学ぶ必然性と、用いる方法は何か。

  • 何をする:入学後の行動計画と、成果の示し方は何か。

  • どこへつなげる:社会や将来の役割にどう結び付けるか。

総合人間学部の志望理由は、「興味が広い」だけで終わらせず、“横断でなければ解けない問い”に照準を合わせることで、説得力が生まれます。自分の言葉で、プロセスと計画を具体的に描きましょう。大学での学びが、あなたと社会の双方にとって意味ある一歩になるはずです。

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