日本の10士業に数えられる中小企業診断士。
「中小企業支援法」第11条に基づいて、経済産業大臣が登録する国家資格です。
今回はこの国家資格である中小企業診断士の仕事内容から中小企業診断士になるために必要な勉強、試験について解説していきます。
中小企業診断士になるには?!:どのような仕事内容?
そもそも中小企業診断士とはどのような仕事をするのでしょうか。
中小企業診断士は中小企業の経営の診断及び経営に関する助言をすることが、中小企業支援法で定められています。
中小企業診断士は国家資格の士業ではありますが、独占業務が無いことには注意が必要です。
基本的には様々なクライアントのニーズに応えるコンサルティング事業が中小企業診断士として言えるでしょう。
幅広い顧客の要望に応える必要があり、様々な専門知識が必要です。
仕事内容は千差万別ですが、中小企業診断士によって解決されたいくつかの事例を見てどの様な仕事があるのか見ていきましょう。
中小企業診断士の仕事例①:経営改善・経営革新
中小企業診断士の仕事として、ある企業の経営改善・経営革新計画承認を行った報告書があります。
経営改善には問題点の把握と計画策定を迅速に行ったそうです。
問題点の共有と意思統一を行い、「経営理念と行動規範」そして「組織図」を作成しました。
現状の把握が必要だった為、
・財務状況の精査
・得意先別売上管理
・仕入先別管理設備の更新計画
・在庫管理
・キャッシュフロー等の改善計画
を作成。
どこから手をつけていいかわからないところから、整理をし的確な対応を取ったことで問題点が明確になり最終的には債務超過を解消したそうです。
また、この整理を行ったことで責任体制と権限の明確化に成功し、各々の責任が明確になったことで仕事に対する姿勢も変わったそうです。
経営革新に関しては、この企業が製造業だった事から「上位機種導入による新材料の開発・生産
と供給体制の確立」をテーマとし、その計画に必要な申請書類を作成しました。
作成には緻密なヒアリングを行い
・行動計画
・工程表
・推進体制
・売上・利益計画
等の書類を作成したそうです。
このように中小企業の経営改善から経営の革新までを、中小企業診断士は幅広い知識と的確なフォローで解決する仕事を行います。
中小企業診断士の仕事例②:知的資産経営フォローアップ
知的資産経営に関するフォローを中小企業診断士が行なった報告書があります。
この知的資産経営は、地域に根付いたスポーツクラブの経営でした。
前提としてオリンピック金メダリストを輩出したコーチ力に定番のあったスポーツクラブではありましたが、人口減少や少子高齢化、新興スポーツクラブの台頭でシェアが下がってきていた状況です。
前述したようにコーチ力等の強みがあったものの複合的な観点から赤字に転落し、方向性も定まらずに悪化していく一方でした。
そこで中小企業診断士の力を借り、問題点の洗い出しから短期・中期での計画の立案、人材力という最大限の強みを生かすための施策を行いました。
知的資産経営はバランスシートでは表せないもので、人材であったり顧客のネットワークであったり経営理念、技術ノウハウ等があります。
これらをワークショップを実施することで、各々の強みや課題を発見することができたそうです。
ワークショップでは、少子高齢化という本来であればデミリットである問題が、実はシニア世代のニーズ需要が増えることに気づいたり、コーチの指導力の素晴らしさ、長年の地域でのネームバリュー等の強みを再認識したそうです。
その後、PDCAサイクルを実施した結果、単年度黒字転換や増収増益までに至ったそうです。
知的資産経営の常日頃同じ環境で働いている人には見えない強みを、中小企業診断士という専門家を入れたことで認識できたことが改善へと至りました。
中小企業診断士の仕事例③:事業承継
中小企業診断士の仕事の一つとして、事業承継があります。
とある介護事業を行なっている企業に対して行なった仕事を報告書から見ていきましょう。
地域柄、介護事業の競争が激化している地域での事業であったことや、同時期に借入金の増加及び資金繰りの逼迫、そして社内体制の整備の遅れが問題視されていた企業でした。
当初はこれらの問題を解決するために、中小企業診断士に助力を願い出たのですが、問題解決中に代表者の末期癌が判明しました。
これを受けて、中小企業診断士はいくつかの方針を決定します。
1.日常的支援
2.金融的支援の対応
3.専門家とのネットワークの構築
4.組織内の対応
5.事業承継準備
以上5項目の実施を行いました。
日常支援では代表者の体調を考慮し、病室と事業所での打ち合わせを行いました。
これにより、代表者と診断士、そして現場の幹部の意思疎通が円滑に行われました。
金融的支援の対応では、金融機関との交渉にはできるだけ診断士も同行することで円滑に融資対応が行われました。
不測の事態が起こる可能性が極めて高い為、専門家とのネットワークの構築には司法書士や税理士、社会保険労務士等専門家と連携を図り、いつでも対応できるネットワークを構築しました。
組織内の対応については、企業リスクの外部漏洩防止や代表者の体調情報等を適切に管理することで、通常業務に支障が出ませんでした。
余命宣告を受けていた事から、事業承継についても準備を行いました。
代表者の意向を確認したり、事業承継される幹部に話を聞いたり、他士業の専門家にも協力を仰ぎ、あらかじめ複数の承継案を計画しました。
そして、代表者が逝去された後実際に以下の事柄が行われました。
1.社内体制の安定
2.家族及び親族の対応
3.事業承継対応
4.資産負債等の承継対応
社内体制の安定には予め幹部会議などで代表者の症状を共有していた事から、逝去されたことによる日常業務の支障はありませんでした。
家族及び親族への対応には、後継者の選定や手続きを予め会議していたことでスムーズに事が運びました。
事業承継対応については、必要な書類や事務手続き、連絡などをサポートしました。
前述した様に各種専門家とのネットワークを構築していたので、問題なく事業承継が行われました。
資産負債等の承継対応に対しても、他士業の税理士や司法書士と連携して協議を行うことで各々納得のいく形で承継対応を行う事ができました。
当初の予定であった問題解決についても継続してサポートをしており、新代表の下幹部職員達と現状と将来のビジョンを共有したことで、業績目標を達成できました。
この様に、中小企業診断士は企業の問題解決のみならず、依頼された「企業のパートナー」として様々な不測の事態に適切な対応や準備を行いました。
中小企業診断士になるには?!:中小企業診断士の試験について
この様に様々な仕事をする中小企業診断士ですが、一体どうすれば資格を得ることができるのでしょうか。
受験資格については年齢、性別、学歴等関係なく誰でも受験することができます。
中小企業診断士試験は2つあり、2次試験は1次試験の合格者のみが受験する事ができます。
1次試験は例年8月上旬の土曜日と日曜日の2日間かけて行われます。
1次試験の科目は7つあり
1.経済学・経営政策
2.財務・会計
3.企業経営理論
4.運営管理
5.経営法務
6.経営情報システム
7.中小企業経営・中小企業政策
の7科目があります。
試験合格基準は各科目60%以上で、全ての科目に合格する必要があります。
合格科目に関してはその後2回まで免除申請が有効で、それ以降に合格できなかった場合はまた受験が必要になります。
注意する必要があるのは試験毎に科目免除申請を行う必要がある事です。
免除申請を行わない場合は試験合格とみなされないので注意が必要です。
一次試験合格後は二つの選択肢があります。
一つ目は2次試験の受験です。
二つ目の選択肢は中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程に参加する事です。
2次試験の受験資格は、基本的に前年度もしくは今年度の1次試験合格者のみになります。
その他の受験資格者については公式サイトで確認をしてください。
短答式又は論文式の筆記試験及び口述試験があり、筆記試験は例年10月、口述試験は例年1月に開催されます。
これらの試験で合格すれば無事合格となります。
この試験の後は、中小企業診断士実務補習もしくは診断実務従事のどちらかを15日以上行い、無事中小企業診断士として登録がなされます。
二つ目の選択肢である中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程は、決められた機関で実施する必要があります。
定められた機関については公式サイトに掲載されているので確認しましょう。
この養成課程をクリアする事で、中小企業診断士として登録がなされます。
中小企業診断士になるには?!:中小企業診断士のその後
1回登録されると登録は5年間有効となります。
その後は更新制になり、登録期間の5年間の間に
1.中小企業診断士理論政策更新研修を5回以上受講
2.診断実務従事 30日以上
行う事が必須となります。
中小企業診断士になるには?!:中小企業診断士の試験合格への勉強
前述したように中小企業診断士の試験合格は厳しい道のりです。
1次試験は約20〜40%、2次試験は約10%〜25%の合格率と狭き門であることは間違いありません。
学生の時分から中小企業診断士を目指すには、1次試験の科目にある内容を学べる
・経済学部
・商学部
・経営学部
といった学部選択を取る事が重要になってきます。
これら全ての学部が存在し、かつ福岡・東京・神戸といった都市部にキャンパスがある事から利便性も抜群な日本経済大学が、中小企業診断士を目指すのにオススメな大学になります。
特に経済学部 商学科にある会計・財務コースは非常にオススメです。
開学から50周年でますます勢いのある魅力的な大学である日本経済大学。
「個性の伸展による人生練磨」を建学の精神とする大学で、中小企業診断士になりたいアナタをしっかりとサポートします。
是非一度公式サイトを確認してみてはいかがでしょうか?