社会保険労務士の資格を取るには

資格取得のメリット・取得に向いている人・試験概要などを解説

by GAWA_K

いわゆる「士業」にカテゴライズされる職種は、資格所有者しか行えない専門的な業務が多いために、すぐに独立開業が可能・どんな時代でも仕事に困らないという利点があります。そのため、士業の資格試験を受験して合格を目指す人は多いですが、その中でも昔から資格取得希望者が多いのが、社会保険労務士、通称・社労士です。

では、社労士の資格取得をするためには、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。今回は、社労士の資格試験の詳細、合格のための勉強方法などについて、詳しく解説します。

 

社会保険労務士とは

高い専門性を持つために、特定の資格取得をしていないとできない業務を担当する「士業」において、特に資格取得の難易度が高いと言われている8種類の士業は「8士業」と呼ばれています。その中のひとつが国家資格である社会保険労務士(以下、社労士)です。

社労士は、労務や人事、雇用や年金に関わる業務を行います。具体的な業務内容は以下の通りです。

  • 労働社会保険に関する書類作成や提出、各種申請の代行
  • 労使紛争に関する手続き代行
  • 労務に関する問題のコンサルティング

社労士が担当するほとんどの業務は、高度な知識とスキルがないとできない独占業務といわれています。そのような法律に精通していないとできない業務を全面的に担当できるのが、労務や人事に関するスペシャリストである社労士なのです。

 

社会保険労務士の資格取得のメリット

社労士の資格取得は「すぐに独立開業が可能」「独占業務のため不況であっても仕事に困らない」などのメリットがありますが、それ以外にも多様なメリットをもたらしてくれます。では社労士の資格取得で得られるメリットとは何か、次より紹介しましょう。

社会人に必要な知識が学べる

社労士の資格取得のためには、大きく分けて8つの分野を習得しなくてはいけません。その8つの分野とは次の通りです。

  1. 労働基準法および労働安全衛生法
  2. 労働者災害補償保険法
  3. 雇用保険法
  4. 労務管理および労働に関する基礎知識
  5. 社会保険に関する基本的な知識
  6. 健康保険法
  7. 厚生年金保険法
  8. 国民年金法

上記の分野のうち、1〜4が労働関連、5〜8が社会保険に関する分野に該当します。どの分野も社会人として生活するうえで大きく関わるものばかりです。

労働基準法に関しては、労働環境における基準・発生する収入、解雇の条件などを学びます。それによりいわゆるホワイト企業・ブラック企業の具体的な線引きが把握でき、自身の労働環境が正常であるかどうか、自身の労働に対して真っ当な収入が発生しているかが理解できるでしょう。

そして、健康保険法・厚生年金保険法の分野では、どのような事態に対してどれくらいの保険給付があるのか把握できます。高齢化社会の問題点である介護に関する法律も学ぶために、社会人として役立つことばかりです。

これらの分野を学習して知識を吸収すれば、自分が社会人として正しい環境にいるかどうか、自分で判断できます。仮に社労士の試験に合格できなくても、身についた知識は今後大いに活かされます。

就職・転職でも強いアピールになる

社労士のような士業は、資格取得後に即独立開業できることが魅力であり、実際に開業を計画している人も少なくないでしょう。しかし社労士の資格は独立開業のためだけではなく、企業への就職・転職活動においても大きなアピールポイントになります。

企業に在籍して働く社労士は勤務社労士と呼ばれ、担当する業務は企業の健康保険や年金、従業員の給与計算など、企業のお金や保険に関わる業務です。また人事評価なども担当することもあり、企業では誰でもできない複雑な業務を一任することになります。

企業の需要な任務であり、企業によっては資格手当などもあるため、高収入が期待できるでしょう。また、企業内でキャリアを重ねてさらに他資格の取得もすれば、さらなるキャリアアップが見込めて収入もさらに上がります。

他資格との組み合わせが可能

社労士は、他の資格を組み合わせることによって、業務の幅が広がります。社労士と相性が良い他資格は以下の通りです。

  • 税理士
  • 行政書士
  • 中小企業診断士
  • 簿記検定

上記の資格と社労士は業務内容が異なりますが、対象となる顧客は中小企業など同じです。通常であれば、税務に関することであれば税理士に、官公署に関する手続き代行は行政書士に、といった具合に、顧客は依頼内容に合わせてそれぞれ別の窓口に依頼する必要があります。

しかし、社労士が複数の資格を持っていれば、各種手続き代行・書類作成など複数の業務を一手に引き受けることが可能です。顧客側としても一つの窓口であらゆる依頼を済ませられるため、手間が省けます。

また、複数の社労士以外の知識・スキルを持っていれば、顧客に対して多様なアドバイス・サポートが可能です。社労士としてだけでなく、税理士・行政書士・中小企業診断士などの視点でもアドバイスができるため、他の社労士にはできない豊富なサービスを顧客に提供できます。

社会保険労務士の取得に向いている人

社労士に向いている人は、数字に強く地道な作業が苦にならない人・総務や人事の経験がある人が向いています。また、かつてブラック会社に勤務、パワハラなど精神的苦痛を受けて、労働・雇用問題に対する意識が強い人は、社労士に向いているでしょう。

企業によっては、明らかに労働基準法などの法律に従っていない労働環境のところもあります。そのような環境で不当な扱いを受けている従業員を守るのが、社労士の業務の一つです。社労士は、従業員サイドに立って、法律を根拠とした労働環境の整備、改善を行わなくてはいけません。

そのような業務を遂行するためには、労働や雇用に関する問題に強い関心を持っていることが肝心です。法律に従って正しい労働環境・制度づくりをして、一人でも多くの従業員に快適な労働環境を提供したい気持ちが強ければ、社労士として良い仕事ができるでしょう。

 

社会保険労務士の試験概要

では、社労士の資格取得をするためには、どのような試験を受験して合格する必要があるのでしょうか。次より社労士の資格取得試験の詳細について説明しましょう。

開催日・試験会場

社労士の資格取得試験は、全国社会保険労務士会連合会試験センターという期間が運営・実施しています。試験開催日は、毎年1回8月下旬です。

試験会場は北は北海道、南は沖縄と全国の各施設で開催されていますが、受験者の居住地に関係なく好きな場所で受験できます。

試験の合格発表は、毎年10月上旬に厚生労働省公式サイトおよび社会保険労務士試験公式サイト上にて発表、また、10月中旬に合格者に合格証書が送付される仕組みです。

受験資格

社労士の受験資格は「学歴」「実務経験」「他資格の合格」という3つに分類されており、そのうち1つだけでも満たしていれば、受験対象者となります。

学歴に関する受験資格

以下の学校を卒業、あるいは卒業単位を取得した場合、受験条件をクリアできます。

  • 大学
  • 短期大学
  • 専門学校
  • 専門職大学・専門職短期大学
  • 高等専門学校
  • 高等学校高等科、専門学校
実務経験に関する受験資格

実務経験も受験資格を満たす対象ですが、会社の押印などがある受験資格証明書を作成・提出しなくてはいけません。実務経験として認められるのは、以下の通りです。

  • 労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の役員または従業者
  • 国または地方公共団体の公務員など
  • 日本郵政公社の役員または職員
  • 全国健康保険協会または日本年金機構の役員、従業員
  • 社会保険労務士または弁護士の補助者(社労士法人・弁護士法人含む)
  • 労働組合の専従役員
  • 会社その他の法人の労務担当役員
  • 労働組合の職員または法人など、または事業を営む個人従業者
他試験合格の受験資格

他の資格試験に合格して資格取得をしていた場合、それが受験資格対象に入ります。その資格とは以下の通りです。

  • 社労士試験以外の国家試験に合格
  • 司法試験予備試験に合格
  • 行政書士試験に合格

合格が証明できる証明証の提示が必須です。

受験の申し込み方法

受験申し込み方法は、インターネット申込み・郵送申込みの2種類です。どちらかの申し込み方法で、4月中旬~5月末日までに受験申し込みを済ませなくてはいけません。

インターネット申し込み

インターネット申し込みは、社労士試験公式サイトにて「マイページ」の登録をして、必要事項の入力、顔写真や必要書類のアップロード、受験手数料の支払いを済ませれば申し込み完了です。

郵送申込み

郵送の場合は、まず受験案内の請求をして、案内が届いたら受験申込書の記入、顔写真の貼付、必要書類の準備をして、郵便局窓口で受験手数料の支払いをしてから簡易書留郵便で郵送します。インターネット申し込みに比べて受験案内の請求をする必要があるため、数日間の期間がかかります。

受験料

社労士資格試験の受験料は、15,000円です。支払いの際に発生する手数料は自己負担となります。インターネット申し込みの際の支払い方法は、クレジットカード決済・コンビニ払い・銀行ATM払いが選べます。またPay-easyの支払いにも対応しています。

試験内容

社労士の資格試験にて出題される試験項目は、以下の通りです。

  • 労働基準法および労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労務管理その他の労働に関する一般常識
  • 社会保険に関する一般常識
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法
  • 国民年金法

試験は、選択式と拓一式があり、選択式の場合は合計8科目、択一式の場合は合計7科目です。

社会保険労務士の勉強方法

社労士の資格取得試験は難易度が高いために、1,000時間もの勉強時間が必要といわれています。1日約3時間ほどの勉強時間を毎日こなす必要があり、それでも合格まで数年かかったという人も珍しくありません。そのため、年間スケジュールをしっかりと計画する必要があります。

おすすめなのは、資格スクールや通信講座の通学・受講です。スクール・通信講座であれば長年の歴史や実績によって構築されたカリキュラムに沿った年間スケジュールを用意してくれるため、日常生活に負担がかかることない学習方法で、確実に実力アップが実現します。

スクール・通信講座では、経験豊かな講師陣のアドバイスを直接受けることが可能です。また受講生たちとの横のつながりもできて、同じ目的を持った仲間たちと励まし合いながら学習が進められます。

 

まとめ

世の中がどんな不況・経済状況になろうとも仕事に困ることがない職種はいくつか存在しますが、その中の一つが社労士です。保険や労働問題、年金などに関する専門家である社労士は、独占業務を担当するために資格取得さえすれば、すぐに独立開業できる強みがあります。

社労士資格取得をするためには、社労士という資格が具体的にどのような性質のものであり、どのような試験概要であるのか、事前にしっかりと知っておく必要があります。今回の記事で解説した社労士の大事なポイントを押さえて、スムーズな資格勉強を実現させましょう。

 

 

 

 

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■日本経済大学(都築学園グループ / (学)都築育英学園)

都築学園グループは、「個性の伸展による人生練磨」を建学の精神とし1956年に設立。2018年に開学50周年を迎えた日本経済大学は経済・経営の実学に特化した2学部6学科17の専門コースを持つ日本有数の留学生を抱える国際色豊かな大学です。

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