歴史学部の志望理由は、「歴史が好き」だけでは弱く、関心 → 学びの方法 → 実践 → 将来の貢献を一本で語ることが重要です。ただし、各大学のカリキュラムや入試要項は異なるため、最新の公式情報で必ず確認してください。
歴史学部で学べること
一般に歴史学部や歴史系学科では、次の三層を組み合わせて学びます。
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領域:日本史・東洋史・西洋史・地域史・文化史・社会史・経済史・宗教史など
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時代:古代/中世/近世/近現代などの時代区分
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方法:史料の読解と批判(一次・二次史料の区別、出所・異同の検討)、古文書・碑文・新聞・統計・地図・写真・口述記録の扱い、必要に応じた言語運用や基礎統計、地理情報(GIS)や**デジタル・ヒューマニティーズ(DH)**の導入 ※導入度合いは大学により異なります。
志望理由では、自分の問いをこれらの学びにどう接続するかを具体的に示すと、説得力が増します。
志望理由の基本フレーム「3WHY+2HOW」
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WHY Field(なぜ「歴史」なのか)
きっかけとなった体験・読書・探究活動・地域との関わりなど。 -
WHY Learn(なぜ大学で学ぶのか)
個人の興味を越えて、史料批判・調査法・方法論を体系的に習得する必然性。 -
WHY Me(なぜ自分が取り組むのか)
活動実績・強み・価値観との連続性。 -
HOW Study(入学後の学び方)
想定する時代・地域・方法、ゼミ・演習・史料読解、必要な言語やデジタル技能の計画。 -
HOW Contribute(学内外への貢献・将来像)
調査・展示・記録化・発信など、学びの社会的な接続の仕方。
この5点をPREP法(結論→理由→具体→再結論)で束ねると、読み手に明快に伝わります。
尺別テンプレ:30秒/90秒/3分
30秒(要旨)
結論(志望領域と時代)→ 自分の問い → 学びの方法(史料×方法論×言語/デジタル)→ 将来の貢献
90秒(標準)
①関心の核(体験・観察・探究)
②大学で必要な理由(史料批判・方法)
③履修イメージ(演習・ゼミ・技能)
④実践(展示・発信・地域連携)
⑤貢献(学内外)
3分(詳細)
①課題の構造化(関係者・史料の種類・制約)
②先行研究の視点への目配り(「〜という見方がある」程度で中立に)
③自分の仮説と限界
④学びの設計(時代×地域×方法+言語/デジタル)
⑤大学内での検証計画(小さく試す)
⑥将来の役割像(職名より“役割”で語ると一貫性が出る)
志望理由の例文(テーマ別・サンプル)
*以下はあくまでもサンプル例です。
例1:地域史と公共性
祖父母の地域で古い商店街が姿を変える過程を見て、生活の記憶が街とともに失われることに関心を持ちました。地域史は出来事の年表ではなく、人びとの暮らしと制度・経済の交点を可視化する営みだと捉えています。歴史学部で、近現代の地域史を対象に、新聞・商工名鑑・地図・写真・口述記録を組み合わせた史料批判の基礎を学び、必要に応じてGISやデジタル・アーカイブの初歩も取り入れたいです。学内の演習では小規模な聞き取りと史料整理を行い、成果を展示やウェブで公開する実践に挑戦します。将来は、地域の記憶を継承し、観光やまちづくりと両立する情報発信の設計に携わりたいです。
例2:文化財と保存・活用
修学旅行で訪れた寺院の修復現場に興味を持ち、文化財の保存と公開の両立に課題意識を持ちました。歴史学部で中世〜近世の宗教史・美術工芸史を学び、文献・絵巻・記録・発掘報告などの史料を批判的に読み解く力を養います。学芸員課程の科目があれば併修し、展示の構成や解説文の作法を身につけたいです。学内外の見学・実習の機会を活かし、保存と活用の視点から小さな展示企画を試し、将来は文化財の価値をわかりやすく伝える役割を目指します。
例3:オーラル・ヒストリー
戦後の生活史に関心があり、身近な人々の語りを記録するオーラル・ヒストリーの手法に魅力を感じています。歴史学部で面接票の作り方、倫理、逐語化と要約の手順、複数証言の突合せなど、記録化の作法を学びます。図書・新聞・行政文書と照合し、語りの位置づけを丁寧に検討します。地域の図書館や学校との連携があれば参加し、成果の公開と返却(リターン)を意識したプロジェクトに関わりたいです。
例4:比較史・世界史
近代化の過程で各国が似た課題に直面しながらも異なる選択をしたことに関心があります。歴史学部で比較史の方法を学び、統計資料や議会記録、外交文書などの多様な史料を扱う基礎力を養います。英語の一次・二次文献の読解を段階的に取り入れ、必要があれば第2言語の基礎も学習します。入学後は、特定のテーマ(教育・税制・都市化など)を軸に日本と海外のケースを比較し、共通点と相違点の条件を明確にしていきます。
例5:デジタル・アーカイブと発信
学校の探究で旧写真のスキャンとメタデータ付与を行い、検索性の重要さを実感しました。歴史学部で、史料の保存・公開・利用の枠組みを学び、目録作成や基本的なデータ整形の考え方を身につけたいです。小さな史料群から始めて、権利やプライバシー、説明の文体など、公開に伴う配慮を実地で学び、歴史の学びを社会に開いていく発信に繋げます。
活動を“学び”に変えるコツ(変換フレーム)
SEA→MAPで、体験を「検証可能な学び」に変換します。
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S(Scene)状況/E(Event)出来事/A(Action)行動
→ M(Meaning)意味/A(Application)応用/P(Plan)計画
例:
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S/E/A:地域の古写真を収集→分類基準が統一されず検索しにくい
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M:説明の視点が混在していると検索性が下がる
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A:撮影年・場所・人物・出来事の最低限のタグを決めて再編
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P:大学では記述規則やメタデータの基本を学び、公開に耐える形をめざす
歴史学部 志望理由で評価されやすい観点
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一貫性:関心→方法→実践→将来の役割が一本でつながる
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具体性:具体の史料・場面・行動を挙げ、抽象語を補強する
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妥当性:「大学で学ぶ必然性」(史料批判、言語、方法)
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協働性:図書館・博物館・地域との協働に開かれている姿勢
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再現性:一度の成功談でなく、次回も再現できる行動原理
NGになりやすい表現と安全な言い換え
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NG:「昔の出来事にロマンを感じる」
OK:「史料に基づく検証で、出来事と生活の関係を具体的に捉えたい」 -
NG:「史実の真相を暴く」
OK:「複数史料の照合と限界を前提に、妥当な説明を積み上げたい」 -
NG:「歴史は暗記が得意だから」
OK:「史料から問いを立て、根拠を明示して説明する学びに惹かれる」
志望理由書チェックリスト20
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冒頭で志望領域・時代・問いが明確か
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体験→学び→計画の流れが自然か
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抽象語に場面・行動・数が添えてあるか
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「大学で学ぶ必然性」が書けているか
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史料の種類と扱い方に触れているか
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言語(古文書・英語等)や技能(デジタル等)の学習計画があるか
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他者の視点(住民・研究者・機関)を併記したか
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一般化の断定を避け、中立的表現になっているか
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将来像を役割で語れているか
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逆質問の準備があるか(学び・実践の機会に関するもの)
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誤字脱字・表記ゆれがないか
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文字数・書式が要項準拠か
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参考情報の出所管理ができているか
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体験談が長すぎず、分析に比重があるか
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自分の限界と次の一歩を書けたか
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PREPで段落が読みやすいか
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固有名詞・年号の整合が取れているか
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面接で口頭要約できる内容か
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第三者レビューを受けたか
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最後に**再結論(要約)**を置いたか
面接対策(頻出質問と答え方の軸)
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志望理由を30秒で:結論→理由→具体→貢献
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最も印象に残った史料/展示:何がわかり、どの限界を感じ、どう補うか
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歴史の“現在性”:なぜ今このテーマを扱うのか(教育・観光・記録化等に接続)
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方法について:史料批判・比較・口述・デジタルなど、入門レベルの理解
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英語や古文書への不安:弱点の認識→具体的な補強計画
逆質問の例
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「近現代の地域史を扱う演習で、外部機関との連携や小規模展示の機会はありますか。」
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「古文書の読解練習は、初学者向けの段階的な教材や指導体制がありますか。」
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「デジタル史・アーカイブに関心があり、初歩的なツールを学べる実習はありますか。」
小論文・課題型選考への備え
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テーマの分解:用語定義→論点→立場→根拠→反論処理→結論
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史料の扱い:出所・年代・作成主体・目的を確認し、限界を明示
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図表・画像:引用のルールとキャプションを遵守
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文体:主張は簡潔、事実は慎重に。断定口調の多用は避ける。
1週間で仕上げる準備プラン
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D-7〜5:志望理由(90秒版)作成→録音→推敲
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D-4:頻出質問10の素案作成(史料・方法・将来像)
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D-3:逆質問3本を用意(演習・ゼミ・実習の機会)
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D-2:提出物の体裁・参考文献リスト整備
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D-1:口頭要約と時間配分の最終確認
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D-0:落ち着いた速度・明瞭な発音・簡潔な結論
併願を考える際の比較視点(中立的)
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人文学部(史学系):歴史の広がり。語学・思想・文化との接続が強い設計も。
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文化財・考古学:実測・保全・発掘調査など、実務寄りの比重が高いケース。
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日本史/世界史/地域研究:範囲・方法が明確で、深掘りがしやすい。
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社会学・文化人類学:現在のフィールド調査に重心。歴史と補完関係。
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地理学:空間分析やGISの導入が前提の設計も。
※実際の設計は大学により異なるため、最新の公式情報を確認してください。
まとめ:志望理由は「問い→方法→実践→役割」を一本に
歴史学部の志望理由は、自分の問いを中心に、史料批判・方法論・言語/デジタルの計画を示し、学内外の実践に落とし、将来の役割までつなげることが要点です。テンプレはあくまで型。あなたの経験・価値観に置き換えて、一貫性と具体性を担保してください。
日本経済大学のご紹介— 教職課程で教育者を目指す
歴史や地理歴史の学びを将来の教育に活かしたい方へ、日本経済大学には教職課程が設けられています。以下は学内案内の要点です(詳細は必ず公式情報でご確認ください)。
●教職課程で教育者としての道を切り開く
社会の変化に対応し、豊かな人間性を備えた教育者の育成を目指しています。教職課程は教員免許状の取得を主眼に授業を展開。教育職員免許法に基づく所定単位を修得することで、卒業と同時に教員免許の取得を目指せます。
●取得可能な教員免許(学科により異なります)
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経済学部
・経済学科:中学校教諭一種(社会)/高等学校教諭一種(地理歴史・公民)
・商学科:高等学校教諭一種(商業)
・健康スポーツ経営学科:中学校教諭一種(保健体育)/高等学校教諭一種(保健体育) -
経営学部
・経営学科:高等学校教諭一種(商業)、中学校教諭一種(社会)※渋谷キャンパスのみ
高等学校教諭一種(地理歴史・公民)※渋谷キャンパスのみ
●教職に関する科目と教育実習
教職論・教育心理学・教育方法論などの基礎から、社会科・地理歴史科教育法、商業科教育法といった専門教科の指導法まで幅広く学べます。教育実習では、学校現場での指導経験を通じ、理論を実践に結びつける力を磨きます。
●日本経済大学で教員を目指す魅力
学部の専門学修と並行して教職科目を履修でき、現場で役立つ知識と技能を体系的に身につけられます。多様な学生が集う環境は、歴史・地理歴史の視点を教育に活かしたい方にとっても学びの土台となるでしょう。
オープンキャンパスや個別相談、カリキュラム・入試方式などの詳細は、必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。資料請求やイベント参加の活用もおすすめです。