全国通訳案内士とは何か?

試験内容、メリット、難易度などを徹底解説!

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全国通訳案内士は語学系唯一の国家資格です!

全国通訳案内士は、観光庁が実施する試験に合格し、居住都道府県で登録された方に与えられる国家資格です。

外国人観光客に日本を紹介する役割を担う全国通訳案内士は、語学力に加えて歴史や文化など幅広い知識が求められる専門性の高い仕事として注目されています。

この記事では、観光を通じた国際交流に携わる全国通訳案内士について説明します。また、全国通訳案内士試験の概要、合格率、一部試験科目の免除条件、取得のメリット、難易度なども紹介しますので、全国通訳案内士の資格取得を検討している方は参考にしてください。

1.全国通訳案内士とは

①全国通訳案内士はどんな仕事か?

最近まであまり知られていなかった「通訳案内士」の仕事ですが、昨今のインバウンドの急増により、徐々に知られてきています。

通訳案内士は、簡単に言うと、訪日外国人をその外国人に通じる言語で案内する観光ガイドです。

日本には、京都、奈良、大阪、北海道、東京、九州など、外国人が何度も訪れたくなる魅力的な観光地が沢山あります。観光産業は、近年、日本経済を活性化する上で最も重要な基幹産業に位置付けられています。

外国人観光客が増えて外貨が日本に流れれば、経済は豊かになります。家電やIT分野で他国に後れを取っている日本にとって、観光産業は今日世界に太刀打ちできる唯一の経済資源なのです。

日本政府は2007年に観光立国推進基本法を制定し、翌年2008年には観光庁を設立。インバウンド市場の拡大を積極的に推進してきました。新型コロナ感染拡大により、しばらくの間計画が見送られていましたが、収束に向かっているこれから、以前にもまして訪日観光客は増えていくでしょう。

そして、外国人観光客の増加に伴い、国家資格として注目されているのが全国通訳案内士なのです。

全国通訳案内士の仕事は、訪日外国人旅行者を日本の観光地に案内したり、旅行中のサポートをすることです。日本の歴史や地理に精通し、風土や文化など日本の魅力を外国語で説明する必要があります。外国語が得意な通訳だけの仕事ではないということなのです。

②全国通訳案内士になるには?

通訳案内士になるには、年1回行われる全国通訳案内士の国家試験に合格し、住んでいる都道府県で登録をする必要があります。

また、2020年4月より全国通訳案内士国家資格取得のための通訳案内士研修が開始されました。研修は5年に1回の受講が義務付けられており、観光庁が定める登録機関一覧で研修内容や日程を確認し、期限までに研修を受講することが義務付けられています。

以前は、通訳案内士の資格を持っていなければ、通訳ガイドを仕事にすることはできませんでした。

しかし、急激な観光客の増加に対応するため、2018年1月に通訳案内士法が改正され、資格を持たなくても、お金をもらって通訳ガイドとして働けるようになりました。

ただし、名札に「通訳案内士」入れることができるのは、通訳案内士国家試験に合格し、都道府県に登録している方のみです。つまり、全国通訳案内士は国が認める名称独占資格なのです。

③全国と付く理由は?

通訳案内士法の改正前は、「全国」は付いておらず「通訳案内士」と規定されていました。さらに、特定の地域(観光地)でのみ活動できる地域通訳案内士という制度もありました。

現在、通訳案内士の業務独占規制はなくなりました。資格を持っていなくても有料で通訳ガイドができるようになるなど、通訳案内士の制度は大きな変化を遂げています。

その結果、通訳案内士と地域通訳案内士を区別するために、称号に「全国」が付けられ「全国通訳案内士」という呼称が定義されるようになりました。

地域通訳案内士の制度は現在もあります。

④全国通訳案内士と地域通訳案内士の違いとは?

地域通訳案内士は、その地域ならではの観光の魅力を外国人観光客に伝えるために設けられている資格です。各市区町村や都道府県が定める要件を満たし、所定の研修を修了することで資格が与えられます。全国通訳案内士の国家試験を受ける必要はありませんが、活動範囲は特定の地域に限定されています。

地域通訳案内士は、語学能力の証明としてTOEICスコアなどの語学能力試験の結果を提出するのが一般的で、地域によっては研修後に口述試験が行われることもあります。

現在、全国39地域で地域通訳案内士の制度が導入されており3500人以上の地域通訳案内士が育成されてきました。自治体によって募集状況や対象言語、登録までの流れが異なりますので、地域通訳案内士の資格取得にも興味のある方は、地域ごとの募集要項や応募方法を確認する必要があります。

2.全国通訳案内士試験とは

全国通訳案内士の資格を取得するためには、まず通訳案内士試験に合格しなければなりません。1年に1回しか実施されない試験なので、入念な準備が必要です。

試験詳細を見ていきましょう。

①全国通訳案内士試験の概要

全国通訳案内士試験は、資格取得を目指す方なら誰でも受験できます。年齢や国籍などは一切問われません。試験内容は筆記と口頭試験の2部制です。

(1) 一次試験の概要

一次試験は筆記試験で、「外国語」「日本地理」「日本歴史」「一般常識」と、2018年より新たに加わった「通訳案内の実務」の5科目です。

外国語は、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語から1つを選択します。

一般常識とは、産業、経済、政治及び文化に関する一般常識が出題されます。

【試験科目】
外国語: 試験時間 90分 合格基準点 70点/100点満点
日本地理: 試験時間 30分 合格基準点 70点/100点満点
日本歴史: 試験時間 30分 合格基準点 70点/100点満点
一般常識: 試験時間 30分 合格基準点 70点/100点満点
通訳案内の実務: 試験時間 20分 合格基準点 30点/50点満点

試験形式はマークシート方式です。筆記試験では、原則として上記の全教科で合格基準点に達しているかどうかで合否判定が行われるため、すべての分野でバランスの取れた点数をとる必要があります。

(2) 二次試験の概要

二次試験はおよそ10分間の口述試験です。口述試験の目的は、通訳ガイドの実践的なコミュニケーションスキルを評価することです。筆記試験で選択した外国語で求められる実践的なコミュニケーション能力が評価されます。

二次試験は、大きく分けて「日本文化に関するプレゼンテーション」、「外国語訳」「実際のガイド現場で求められる知識と対応に関する設問と回答」の3つに分かれています。

「日本文化に関するプレゼンテーション」では、受験者は提示された3つのテーマから1つを選択し、外国語で説明した後、試験官との質疑応答に対応します。

「外国語訳」では、試験官が読んだ日本語を外国語に訳し、その内容に関する質問に答えます。

口述試験の合否は、以下の評価項目に基づき、合格基準点(原則70%)に達しているか否かにより判定されます。

【評価項目】
・プレゼンテーション
・コミュニケーション(臨機応変な対応力、会話継続への意欲等)
・文法及び語彙
・発音及び発声
・ホスピタリティ(全国通訳案内士としての適切な受け答え等)

②全国通訳案内士試験の免除科目

全国通訳案内士試験は、一定の条件を満たすと一部の科目が免除される制度があります。通常、筆記試験は5科目ありますが、すでに取得している語学試験の点数や特定の資格を活用することで、一部科目の免除を受けることができます。

前年度に受験した一次試験で一部または5科目全部に合格していると、合格している科目は免除されますので、出願時に条件をよく確認してください。

③全国通訳案内士試験の勉強方法

(1)過去問

通訳案内士試験に合格するためには、試験日程から逆算して学習計画を立て、十分な準備期間を設けることが重要です。

全国通訳案内士試験を主催する日本政府観光局は、過去の筆記試験問題をホームページで公開しています。著作権の制限により、一部の問題は公開されていませんが、最初にそれらを読んで試験の概要を把握することをお勧めします。

(2)参考書と問題集

独学で受験する場合は、市販の参考書や問題集を使って受験勉強をすることになります。筆記試験の教科別テキスト、口述試験対策書、問題集など、販売されている教材は数多くあります。自分に合うものをじっくり選んでください。沢山買うことに意味はありません。

(3)全国通訳案内士試験対策スクール・通信講座

全国通訳案内士の資格を取得したいけれど、独学では難しく挫折してしまうのではないかと不安な方は、全国通訳案内士試験に特化した対策コースを提供しているスクールや通信講座を選ぶ方法もあります。

インターネットで検索すると、全国通訳案内士向けのクラスを提供している語学学校や通信講座がいくつか見つかります。

(4) 資格対策スクール主催の公開模擬試験を受験

本番前の仕上げとして、資格対策スクール主催の公開模擬試験を受けることをお勧めします。受験後、解答・解説付きの成績表が送られてくるので、試験前の実力チェックとして最適です。

3.全国通訳案内士の資格を取得するメリット

①就職・転職に有利

全国通訳案内士の合格率は10%前後と、大変難しい国家資格です。そのため、在学中に合格すれば、旅行会社などへの就職・転職に有利です。

英検1級程度の実力があることを証明できるので、一般企業への転職でも語学に強いことをアピールできます。

全国通訳案内士として独立して働ける人はほんの一握りで、大抵は旅行代理店で働いたり。何らかの団体に登録して、派遣のような形で活動しています。

全国通訳案内士の資格を取得していても、すぐに通訳ガイドとして独立するのではなく、旅行会社などに就職した方が、資格を活かせるチャンスが多いです。

②通訳ガイドの仕事が貰いやすくなる

通訳案内士の資格を必要としない旅行会社や個人旅行者とつなぐCtoCプラットフォームが増えてはいますが、全国通訳案内士を優遇する大手旅行会社もまだまだあります。

資格は、一定の努力や知識、語学力を保証するもので、仕事を得るのに役立ちます。また、旅行会社などとのマッチングイベントを開催している都道府県もあり、資格を持っていればこうしたイベントに参加できるチャンスがあるのもメリットです。

③観光地の施設などで優遇が受けられる

全国通訳案内士の資格を持っていると色々な施設で優遇を受けらます。

外国人のお客様を連れている際に資格証を提示すれば無料で入館できる施設がたくさんあります。また、お客様を連れていなくても下見として無料で入れてくれる施設もあります。

④語学力が証明できる国家資格

全国通訳案内士は語学系の検定で唯一の国家資格です。また、「TOEIC990点」「英検1級」「全国通訳案内士」は英語資格の三冠王と呼ばれています。

語学力を証明するために、通訳案内士の資格を取得する人も少なくありません。

4.全国通訳案内士試験の難易度

全国通訳案内士試験の2022年の合格率は全言語平均で16.4%でした。これは、最近の中で一番高い合格率になっていますが、それ以前は10%にも満たないことが多くありました。難易度がかなり高い試験です。

語学力だけでなく、教科が多岐にわたることが大きな原因です。

受験者数が最も多い英語を例にすると、全国通訳案内士試験の英語問題は、TOEICや英検1級に比べると比較的難易度が低いと言われています。

しかし、日本の歴史、地理、一般常識は、言語の試験よりも難しいと感じている受験生が多いようです。

【2022年度 全国通訳案内士試験の合格者数】

言語:英語 受験者数:2,594人 最終合格者数:452人 合格率:17.4%
言語:フランス語 受験者数:162人 最終合格者数:12人 合格率:7.4%
言語:スペイン語 受験者数:99人 最終合格者数:16人 合格率:16.2%
言語:ドイツ語 受験者数:44人 最終合格者数:11人 合格率:25.0%
言語:中国語 受験者数:320人 最終合格者数:38人 合格率:11.9%
言語:イタリア語 受験者数:71人 最終合格者数:12人 合格率:16.9%
言語:ポルトガル語 受験者数:32人 最終合格者数:6人 合格率:18.8%
言語:ロシア語 受験者数:42人 最終合格者数:5人 合格率:11.9%
言語:韓国語 受験者数:87人 最終合格者数:19人 合格率:21.8%
言語:タイ語 受験者数:21人 最終合格者数:0人 合格率:0.0%

おわりに

全国通訳案内士の概要、試験内容、メリット、難易度や合格率を解説しました。

合格するためには、語学力が必須です。英語の場合、子供の頃から積み上げてきた実力が試されます。英語で自分の言いたいことを表現できることが前提条件の資格試験です。

その上、日本の歴史、地理、一般常識についても勉強しなければなりません。これが通訳案内士試験の特徴です。

加えて、通訳ガイドとしての「おもてなしの心」も評価されることを心にとどめて勉強を頑張ってください。

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