「単科大学」と「総合大学」という言葉をきいたことがありますか?
「大学」と聞くと、4年制大学を思い浮かべる人が多いですよね?実際、医学部を除くほとんどの大学は4年制です。しかし、短大という2年制の大学があるのも事実ですので、大学イコール4年制大学というわけではありません。
大学を正確に区分すると、単科大学か総合大学の2つになります。志望大学を決める際に”4年制大学”というキーワードで探す人はいないででしょう。自分の学びたいことを決めて、その学部や学科、そして偏差値や校風などから志望大学を絞っていくのが通常です。
それでは、学びたい分野が単科大学と総合大学のどちらにもある場合、どちらを選択しますか?
この記事では、単科大学と総合大学の歴史、違い、共通点、メリットなどを解説します。単科大学と総合大学どちらに進学するか迷っている方はぜひ読み進めてください。
1.単科大学とは
単科大学とは、単一の学問分野を教育・研究する小規模な大学の呼称です。ただし、複数の学部を持っていても規模が小さい場合は単科大学に分類される大学もあります。
単科大学は、総合大学とは異なり、学部が一つしかない専門性の高い大学です。単科大学に進学することで、その分野に精通した講師による専門性の高い授業を受け、能力を伸ばすことができます。
「○○薬科大学」「「○○栄養大学」「○○音楽大学」などの名前が付いている大学は多くの場合単科大学です。例えば「○○薬科大学」では全ての学生が薬学部に在学して学んでいる学生です。
2.単科大学の歴史
伝統的な単科大学の多くは、高校や専門学校から移管されたものです。
明治時代、総合大学としての帝国大学のみが正式の大学とされ、単科大学は認められていませんでした。
一方、早くから高等商業学校などの官営の実学系専門学校に加え、公立・私立の専門学校が設立されていました。 1903年(明治36年)に「専門学校令」が制定され、制度的な立場が明確になった後、一部の有力な学校は大学への昇格を求める運動を開始しました。
1918年(大正7年)に「大学令」が制定され、公私立大学の設置とともに単科大学の設置も認められることとなりました。当時、専門学校が大学に昇格されるとすれば、一つの学部しか作りえない学校が多く、公立大学と私立大学の認定に対して単科大学の認定は、実質的に切り離せなかったのです。
こうして単科大学は成立したのです。
大学令の制定後、官公立では商学、医学、工学等の実学を専門とする専門学校が大学に昇格し、帝国大学に比べると高度な専門職人を育成する役割を果たしました。
1920年(大正9年)に「東京商科大学」の設置が初めて認可されました。母体である東京商業高等学校は、1897(明治30)年頃から、大学昇格運動をすでに開始していました。
単科大学の移管が比較的早かったのは医学系の専門学校でした。1922年(大正11年)には新潟と岡山にある官立医学専門学校が最初に医科大学になり、1923年(大正12年)には千葉、金沢、長崎でも変わりました。
1928年(昭和3年)には「大阪商科大学」として大阪高等商業学校が、「神戸商科大学」として神戸高等商業学校が移管されました。工業系では、1929年に「東京工業大学」として東京高等工業学校、「大阪工業大学」として大阪高等工業大学の移管が認可されました。
このように、大正から昭和にかけて、国立大学の移管・新設に伴い、単科大学も増えていったのです。
第二次世界大戦後は、医科大学、教員養成大学、そして女子大学など多くの単科大学が設立されていきました。
3.総合大学とは
単科大学に対し、「総合大学」とは大規模かつ広い範囲の領域について教育・研究を行っている大学を指しています。文化系・理科系を含んだいくつかの学部で構成されている大学を総合大学と呼んでいますが、単科大学に対してこの呼び方を用いるケースが多くみられます。
総合大学とは、大規模で幅広い分野の教育と研究を行う大学を指します。文系や理系など複数の学部からなる大学を総合大学といいます。ただ、総合大学の呼び方は単科大学と比較するときにのみ使われる場合ほとんどです。
4.総合大学の歴史
①明治~大正の総合大学
総合大学とは、大規模で幅広い分野の教育と研究を行う大学を指します。文系や理系など複数の学部からなる大学を総合大学といいます。ただ、総合大学の呼び方は単科大学と比較するときにのみ使われる場合ほとんどです。
国内の大学は、単科大学と比べると圧倒的に総合大学が多いです。幅広いとはいっても、複数の学問分野を網羅する大学もあれば、2つか3つの学問分野しかない大学もあります。旧帝国大学はいずれも総合大学であり、10を超える学部からなります。
実を言うと、規模が小さければ、複数の学部があっても単科大学とみなされる大学もあります。
複数の学問分野からなる総合大学という西欧の概念に近い大学観は、すでに1872年(明治5年)の「学制」の高等教育関係規定にみられました。大学校に理学・文学・法学・医学の4科を置くように公布されたのです。
1877年(明治10年)に、日本初の大学として、東京大学が創設されました。初めは、法学部、理学部、文学部と医学部は別の組織でしたが、その後4学部が統合され総合大学への第一歩を踏み出しました。
1886年(明治19年)には「帝国大学令」により東京大学は帝国大学と改称され、大学の構成単位は、学部から分科大学に変更されました。当初は法学科、医学科、工学科、文学科、理学科の5学科でしたが、1890年(明治23年)に農学科が増設されました。
明治時代の後期、大学の基本形態を総合大学とするか単科大学とするかという議論がされ始めました。そして、第一次世界大戦後の教育改革を策定するために1917年に設立された内閣総理大臣の教育諮問機関である臨時教育会議においても大学改革論争の論点であり続けました。
その後、臨時教育会議では、原則として大学は総合的なシステムを採用する一方で、単科制のシステムを許可する方針が提案されました。1918年(大正年7)、臨時教育会議の答申に基づく「大学令」により、単科大学の設置が認可されました。ただし、大学は複数の学部を持つのが通例であり、総合制が原則となることが明記されていました。
また、大学令では、法学部、医学部、工学部、文学部、理学部、農学部、経済学部、商学部の8学部を設置しなくても2学部以上の大学を総合大学と定義しました。
この大学令の制定を受けて、帝国大学令が改正され、帝国大学は複数の学部で構成し、教師の身分は分科から大学自体に移行することで、総合制を強化していきました。
②昭和の総合大学
1947年(昭和22年)の「学校教育法」において、単科大学は認めるものの、複数の学部を持つ大学である総合大学が常例とされました。
1968年(昭和43年)頃から始まった大学紛争をきっかけに、各大学で様々な改革の試みが行われ、従来の大学政策にとらわれない新しい発想に基づく大学創設が推進されはじめます。
1973年(昭和48年)、学校教育法、国立学校設置法、教育公務員特例法などが改正され、筑波大学が発足しました。筑波大学は、学部を教育組織の学群や研究組織の学科に置き換えた総合大学として、新しい試みを実行しました。このときの学校教育法の改正により、教育研究の基盤となる学部以外の組織の設置が認められ、学部数に関する規定は削除されました。
5.単科大学と総合大学の違い
単科大学と総合大学には、前述で説明した以外にも違いがありますので見てみましょう。
①大学の教養科目
単科大学と総合大学の違いの1つは教養科目です。総合大学には多種多様な学部があり、幅広い分野を研究する教員が在籍しているので、教養科目には幅広い選択肢がある所が多いです。
一方、単科大学の場合、教養科目の種類は限られています。しかし、多くの大学では協定校で取得した単位を認定する「単位互換制度」を導入しています。それにより、別の大学で単位を取得することで選択肢が広がります。
②大学の設備
単科大学と総合大学では、設備に差があることが多いです。
簡単な例としては図書館があります。総合大学の場合、学部の数だけ専門書がありますが、単科大学の場合は、専門分野の本が一元的に入手できる傾向にあります。
他の設備についても、総合大学は、ある分野に特化した設備が整っているのではなく、さまざまな設備が整っている傾向にあり、単科大学には専門の教育と研究のための特化した設備が充実していることが多いのです。
③大学の学生生活
総合大学は学生数が多いため、サークルや部活の数が多い場合が多いです。同じスポーツに複数のサークルがあることは珍しくありません。単科大学の場合は、部活やサークルの数がそんなに多くなく皆が把握できているくらいのことが多いです。
また、大学内に知り合いが多いか少ないかということでも、総合大学と単科大学ではかなり違いがあります。総合大学は人数が多いから知り合いも多いということではありません。総合大学では、学食、図書館、購買などに行ってもなかなか知り合いと会うことはありません。逆に単科大学は、人数が少ないため同じ大学内に知り合いが沢山いることになります。
6.単科大学と総合大学の共通点
専門的な授業の内容については単科大学と総合大学に大きな差はないと考えられます。また取得できる資格や就職率についても、大学による違いになりますので、単科大学と総合大学による差とは言えません。
7.単科大学と総合大学のメリット
①単科大学のメリット
単科大学には、専門分野に特化した人や教授、情報、施設、設備が集約されていて、充実しており、研究しやすい環境が整っていると言えます。高度な専門知識を身につける機会に恵まれる可能性が高いです。
単科大学は、学生数が比較的少ないので、教員や職員の方と話したり、授業、研究、就職活動などについて相談にのってもらったりしやすい環境です。また、同じ分野で勉強している学生と関わる時間が多く、共通の話題が多く仲の良い友達が多くできることもメリットです。
②総合大学のメリット
総合大学のメリットの1つは、今いる学生だけでなく、卒業生も多いため、ネットの掲示板やSNSのグループなどで、講義、研究、単位、サークルなどについて膨大な情報が見られる大学が多いため、4年間の大学生活を充実させることができます。
また、様々な学部に在籍する教授や学生と知り合うことができることもメリットです。自分とは違う考え方や価値観など、新しい刺激を受けることができます。
8. 単科大学と総合大学の具体例と違いとは?
大学選びは、多くの学生にとって大きな決断の一つです。特に、単科大学と総合大学の選択は、将来のキャリアや学びたい内容に大きく影響します。ここでは、単科大学と総合大学の違いを具体的な例を交えて解説します。
単科大学とは?
単科大学は、特定の学問領域や専門分野に焦点を当てた大学です。ここでは、具体的な例を挙げてみましょう。
- 国立の例: 東京芸術大学(芸術系)
芸術専門の大学で、美術や音楽などの専門的な教育を行っています。 - 私立の例: 日本経済大学(経済系))
経済学・経営学の専門教育を行っている大学です。日本経済大学は、あえて総合大学の形態をとらずに経済学、経営学に特化し、経済・経営系専門の単科大学としてこだわりを持ち続け、その専門性を守り続けています。
総合大学とは?
総合大学は、複数の学問領域を持つ大学で、幅広い学部や学科が存在します。以下に、具体的な例を示します。
- 国立の例: 東京大学
日本のトップの総合大学の一つで、文学から工学、医学まで幅広い学問領域を持っています。 - 私立の例: 早稲田大学
文学、経済学、法学、工学など多岐にわたる学部を持つ総合大学です。
9.単科大学と総合大学のどちらを選ぶか
①単科大学に向いている人
単科大学は、大学で学びたいことがかなりはっきり決まっている人に向いています。専門的な分野になるため、それを勉強したいと思わずに入学すると興味を持てずに辛くなってしまうかもしれません。
校舎はコンパクトで生徒数も少ない単科大学では、友達や講師と心地のよい雰囲気でキャンパスライフを過ごせます。そのため、シャイだったり、深く狭い付き合いを好む人に向いているでしょう。人数が少ないため、絆は強くなります。また、1年次から講師陣との距離が近く、講義内容などにについて気軽に質問しやすいです。
②総合大学に向いている人
総合大学向きな人は、まだ学びたいことがはっきり決まっていない人です。簡単な事ではありませんが、たいていの大学では、入学後に学部変更ができます。また、教養科目も選択肢が多いので、いろいろな事を学びたい場合は総合大学を選ぶのが良いでしょう。
総合大学は、人付き合いが好きで、自分の学部以外の学部の人とも幅広く交流したい人にも向いています。自分から行動を起こすのが苦にならない人で、サークルなどでキャンパスライフを楽しみたい人向けです。
おわりに
単科大学と総合大学について紹介させていただきました。
どちらを選択するかは人によって違うでしょう。単科大学を選ぶか、総合大学を選ぶかは、自分の目標や、自分がどのような性格で、どのようなキャンパスライフを送りたいかという点を考慮した上で選ぶことをお勧めします。
日本経済大学について
日本経済大学は、幼稚園から大学院まで全国に30以上の学校を展開する「都築学園グループ」が運営する1968年に開校した大学です。福岡県に本部を置き、神戸三宮、東京渋谷と3つのキャンパスがあり、経済学と経営学を中心に、2学部6学科18の専門コースがあります。
日本経済大学は、あえて総合大学の形態をとらずに経済学、経営学に特化し、経済・経営系専門の単科大学としてこだわりを持ち続け、その専門性を守り続けています。
独創性という唯一無二の創造性は個性のみが持つパワーです。専門の領域から専門職へ、そしてさらには自らの使命である天職へと生涯を通して自己実現を全うしていく「個性の伸展による人生練磨」を日本経済大学は推進しています。
また、日本経済大学では、資格取得やインターンシップなどのキャリアサポートも充実しており、高い就職率を誇ります。
多くの大学が3年次から就活支援を開始する中、日本経済大学では1年次からキャリアデザインを形成し、就職活動を見据えた個人の活動を支援しています。自分の将来像を持ち、1年次から専門分野を学べるのも日本経済大学の魅力です。
経済学部や経営学部の単科大学を受験することを検討中の方は、是非一度ホームページを見て下さい。