起業を志す学生たちにとって、大学での学びは貴重なものです。
現在、世界中の多くの大学が、起業家精神を養うためのカリキュラムを提供しています。これらのプログラムでは、ビジネスプランの策定や投資調達、マーケティング戦略の立案など、実践的なスキルを身につけることができます。
また、起業家としてのマインドセットやリーダーシップ力の向上にもつながります。こうした大学の取り組みは、若い世代の起業家の育成に大きく貢献しているのです。
この記事では、起業について学ぶとはどのようなことであり、どのようなメリットがあるのか、そして起業について学べる大学・学部を紹介させていただきます。
1.大学で起業教えるようになったのはいつからか?
大学で起業をカリキュラムに入れるようになった時期は、2000年代初頭から始まりました。この時期には、世界的なIT産業の急成長やベンチャーキャピタルの投資ブームなどが起こり、若者たちの間で起業家精神が高まっていたことが大きな理由です。
また、日本でも、新しい産業の創出や地域経済の活性化など、社会的課題の解決に向けた取り組みが求められるようになりました。このような背景のもと、大学が起業家育成に力を入れるようになり、起業家教育のカリキュラムが開発されるようになりました。
大学での起業家育成プログラムは、ビジネスプランの策定や起業家精神の醸成など、実践的なスキルや知識を学ぶことができ、起業家としてのスキルアップに大きく貢献しています。また、起業家育成プログラムを通じて、地域社会や社会全体の発展に貢献する起業家を育成することが期待されています。
2.大学で起業について学ぶことのメリットは?
大学で起業について学ぶことには、以下のようなメリットがあります。
①専門知識の習得
経営学部や商学部において、起業に必要な知識やスキルを体系的に学ぶことができます。ビジネスプランの作成や財務・会計など、実践的なスキルを習得することができます。
②アイデアの共有・フィードバック
ゼミや授業でアイデアを共有し、フィードバックを受けることができます。複数の視点からアイデアを評価されることで、よりよいビジネスモデルを構築することができます。
③ネットワークの形成
大学で出会った仲間や教授、卒業生との交流を通じて、ビジネスに必要な人脈を形成することができます。また、大学が主催する起業イベントやコンテストに参加することで、ビジネスパートナーや投資家などの人脈を広げることもできます。
④資金調達のサポート
大学が起業家支援プログラムを提供している場合、ビジネスプランの作成や資金調達に関するアドバイスを受けることができます。また、起業コンテストなどで優勝することで、資金調達の可能性が高まることもあります。
⑤経験値の獲得
大学で起業について学ぶことで、実際にビジネスを行う前にリスクを最小限に抑えた上で、経験値を獲得することができます。また、ビジネスに失敗しても大学内での失敗は学生生活の一部として扱われ、ビジネスをリセットして再スタートを切ることができます。
以上のようなメリットがありますが、起業に成功するためには大学で学んだことを実際にビジネスに応用し、自らの手で行動を起こすことが重要です。
2.取り組むべきポイント
以下は、大学での起業について学ぶために取り組むべきポイントです。
①アイデア発掘の方法を学ぶ
起業の第一歩はアイデアの発掘です。自分の興味や知識、社会課題などからアイデアを生み出す方法を学び、独創的なアイデアを見つけましょう。
②ビジネスプランの作成方法を学ぶ
起業するためには、事業計画書やビジネスプランが必要です。どのような内容を盛り込むべきか、具体的な作成方法を学び、事業計画書の作成に取り組みましょう。
③マーケティングや販売戦略の考え方を学ぶ
起業後には、商品やサービスをどのように市場に浸透させるかが重要です。マーケティングや販売戦略の考え方を学び、自分の商品やサービスを効果的にアピールできるようにしましょう。
④起業家としてのマインドセットを養う
起業は、失敗や困難がつきものです。そのような状況でも諦めずに前向きに取り組むために、起業家としてのマインドセットを養うことが大切です。
3.具体的な講義・ゼミ例
大学で起業について学ぶ具体的な講義やゼミの例を紹介します。
①アントレプレナーシップ論
起業家精神を学ぶための講義です。起業家の成功例や失敗例を学び、起業家に必要な資質やマインドセットを身につけます。
②ビジネスプランニング論
ビジネスプランの作成方法を学ぶための講義です。ビジネスプランの要素や作成手順、実践的な事例を学び、自分のアイデアを事業化するための基礎を身につけます。
③マーケティング論
マーケティングの基礎から、市場調査や商品開発、プロモーションまで、マーケティングに必要な概念や手法を学ぶための講義です。自分の商品やサービスをどのようにマーケットに投入するか、その戦略を考える上で必要な知識を身につけます。
④ベンチャー企業論
スタートアップやベンチャー企業の特徴や課題を学ぶ講義です。ビジネスプランの作成や資金調達、経営戦略の考え方など、起業家として必要な知識を身につけます。
⑤実践的起業ゼミ
起業のアイデア発掘からビジネスプランの作成、実際に商品やサービスを開発・販売するまでの一連のプロセスを体験的に学ぶゼミです。現役起業家を招いての講演やコンサルティングなども行われ、実践的なスキルを身につけることができます。
⑥イノベーション論
イノベーションの概念やプロセス、成功例や失敗例などを学ぶ講義です。起業家としての新しいビジネスモデルや商品・サービスを創造するためのヒントを得られる内容です。
4.起業を学べる大学10選
下記は、学部、学科、コース単位で起業を学ぶことができる大学をいくつか例示したものです。ただし、これ以外にも、各大学の中には起業を学ぶことができる特別プログラムや講座などが多く存在しています。また、地域によっては、起業支援をする施設や専門学校などもあります。
①日本経済大学・経営学部・経営学科・アトツギ・起業家コース
日本経済大学の経営学部には、アトツギ・起業家コースというアントレプレナーシップ(起業家精神)を学ぶための専門的なコースが設置されています。
アトツギ・起業家コースでは、アントレプレナーシップ論、ベンチャービジネス概論、ビジネスプラン講座、リーダーシップ論などの講義があり、起業家として必要なビジネススキルやリーダーシップ、イノベーション能力、マーケティング手法などを学ぶことができます。また、ビジネスプランの作成やプレゼンテーションの技術など、起業家として必要な実践的なスキルも身につけることができます。
②日本大学・生産工学部
日本大学・生産工学部では、令和4年度から、在学中に本気で起業を目指す学生を支援する「起業支援プログラム」を開始しました。
起業支援プログラムは、現役の経営コンサルタントがマンツーマンに近い形式で指導し、基礎的指導から事業プランや資金調達まで一貫したサポートを提供します。このプログラムの目的は、日本大学・生産工学部から学生起業家を輩出することです。また、このプログラムの特徴は、経営コンサルタント1人に対して学生は5組(1組3名)まで受講でき、学内の教授陣から専門分野のサポートが受けられること、学内のプロジェクトルームに専用デスクを用意すること、学内で資金調達コンペティションを実施することです。ただし、単位の認定は伴いません。
起業支援プログラムは、1年目の前半は事業コンセプトを固めるため手厚く指導し、後半は参加学生の状況に合わせて個別伴奏型支援の形式で進め、2年目以降も学生も継続的に相談支援が受けられるようにして、起業まで継続してサポートする体制を整えています。また、在学中の学生に向けて、1年目には9種類のカリキュラムを用意しています。このプログラムでは、選抜試験を実施し、簡易創業計画書の内容と起業意欲により書類と面談にて審査・選抜されます。
③長野県立大学・グローバルマネジメント学部・企(起)業家コース
長野県立大学のグローバルマネジメント学部には、企業家コース(起業家コース)が設置されています。このコースでは、起業、事業継承、第2創業などに関する知識が習得できます。社会や地域の課題を解決する人材を育成することを目的としています。
企(起)業家コースでは、企業経営に必要不可欠なソーシャル・ビジネス論、マーケティング論、リーダーシップ論、アントレプレナーシップ論などの基礎的理論はもちろん、将来的に必要になる具体的なビジネスプランの立て方や経営分析の方法も学ぶことができます。
大学の講義を通じて、起業家としてのマインドを育成するだけでなく、ソーシャル・イノベーション創出センター(CSI)を核とした環境を提供しています。CSIには、起業経験を持つスタッフが在籍し、学生の起業に向けた相談に応じると共に、業界で活躍するゲストスピーカーなどとのネットワーク形成の活動拠点としても機能しています。
④明星大学・経営学部・事業承継・イノベーターコース
明星大学の経営学部には、新たなビジネスモデルの創出や、価値創造に必要な基礎知識を学ぶための事業承継・イノベーターコースが設置されています。このコースでは、「新商品・サービスのデザイン」、「新規事業開発と起業」、「プロジェクトマネジメント」という3つの分野に注目し、様々な体験を通して学ぶことができます。
事業承継・イノベーターコースでは、産学連携による教育機会を豊富に設けています。実務に取り組んでいる実務家との協力によって、現実のビジネスに必要な知識を得ることができます。また、実際に起業した経営者をゲスト講師として招き、彼らの苦労話やアイデアの発想の経緯を聞くことができます。このような機会を通じて、実践的なビジネススキルを身に付けることができます。
さらに、事業承継・イノベーターコースでは、実際の企業を対象とした新商品企画のコンテストを実施し、実践的な企画力を養うことができます。また、「TAMA NEXTリーダープログラム」に参加する機会を提供することで、現役の経営者と共に学び、リーダーシップを向上させることができます。このような取り組みを通じて、将来起業家として活躍する人材や、企業の次世代リーダーを育成することを目指しています。
⑤開志専門職大学・事業創造学部
開志専門職大学の事業創造学部では、経営管理、マーケティング&セールス、会計を軸にして、ICT活用や地域資源活用、課題解決能力を幅広く養うカリキュラムが提供されています。
学生は、実習先で学んだことを実践し、その結果を検証して改善につなげることを繰り返し、1年次から3年次にかけて段階的に成長していきます。また、経済や経営以外にも実践的な学問を幅広く学ぶことができ、事業創造をキーワードに必要な知識を学びます。
さらに、事業創造学部では、新たな価値を創造する力、起業する力、企業内で新規事業をつくる力、イノベーションを起こす力を身につけることができます。現役の著名な経営者などから、グローバルで最先端の知識や経験を学ぶこともできます。
⑥秀明大学・総合経営学部・起業コース
秀明大学・総合経営学部の起業コースでは、起業家や事業後継者、ファッションから美容まであらゆるビジネス分野で活躍する人材を独自のカリキュラムで育成します。
事業計画や資金計画の立て方、会社設立手続きや税務の知識を学び、さらに資金調達の仕方や販路開拓の方法など、起業に必要な知識と方法を学び、関連する専門的な資格取得にも力を入れていきます。
女性の起業を進めるカリキュラムもあります。認定エステティシャン資格取得の講座は、4年制大学初で業界から注目を浴びています。
起業コースでは、学生全員が起業家マインドを持って卒業できるよう、起業に必要な知識や実務を学びます。
⑦慶應義塾大学・総合政策学部/環境情報学部
慶應義塾大学は、創立から150年以上にわたり、世界的な大学の一つとして知られています。その中でも、通称SFCと呼ばれる湘南藤沢キャンパスは、起業家志望の学生が多いことで有名です。在学中に起業したり、NPO法人を設立したりする学生が非常に多く、慶應藤沢イノベーションビレッジという大学連携型起業家育成施設もあります。この施設は、審査に通ればオフィスとして借りることができるため、起業を目指す学生にとって非常に有益な場所となっています。
総合政策学部と環境情報学部の学生は、2つの学部の授業を自由に行き来して学ぶことができます。総合政策学部は「理に融合した文系」、環境情報学部は「文に融合した理系」とされていますが、SFCでは、この2つの学部を文理に区別して考えておらず、実社会の問題に取り組む上で、文理融合が重要であると考えています。両学部のカリキュラムには大きな違いはなく、どちらの学部に所属していても、双方の授業や研究会を履修することができます。また、両学部ともに、グローバルな視野を持つことが求められるため、留学や国際交流も盛んに行われています。
⑧千葉商科大学・商経学部・経営学科・経営診断・起業コース
千葉商科大学の商経学部の経営診断・起業コースは、実学を重視したコースで、国家資格の中小企業診断士、経営者、管理職を目指す人に適しています。このコースでは、経営に関する基本理論だけでなく、経営診断や起業に必要な知識や実践的な経験を身につけることができます。
具体的には、中小企業診断I/II、企業経営体験講義、起業の理論や起業家精神論、経営診断学I/II、地域流通診断の理論と実践、起業基礎実践、起業の実践、中小企業経営論、生産管理などの科目を学ぶことができます。これらの科目は、現場で実際に起こりうる問題に対処するために必要な知識やスキルを提供します。
また、千葉商科大学は、地域に根ざした教育を大切にしており、経営診断・起業コースも地域経済に関する情報やニーズを把握し、学生が地域社会に貢献できるような教育を行っています。
⑨敬愛大学・経営学科・地域・起業コース
敬愛大学・経営学科の地域・起業コースでは、地域に密着した産業やビジネスに関する知識や技能を学ぶことができます。このコースは、地域を元気にするために必要な人材を育成することを目的としており、千葉県の特色である観光や物流など、注目度の高い産業について学び、起業家精神を育成します。また、起業に必要な知識や技術だけでなく、地域社会に貢献できるリーダーシップを身につけることができます。
このコースを修了すると、起業家や経営者、金融機関や経営コンサルタントなど、幅広い職業に就くことができ、資格取得にも力を入れているので、中小企業診断士や税理士、ファイナンシャル・プランナーなどの資格取得も目指すことができます。
⑩武蔵野大学・アントレプレナーシップ学部・アントレプレナーシップ学科(武蔵野EMC)
武蔵野大学・アントレプレナーシップ学部・アントレプレナーシップ学科は、学生たちが自らのアイデアを具現化し、社会に新たな価値を提供するためのスキルを身につけることを目指したカリキュラムを展開しています。そのカリキュラムは、実践的な科目、マインドを育む科目、事業を推進するスキルを身につける科目の3本柱で構成され、授業スタイルもグループ学習や事例研究、対話やゲスト起業家との対話など、アクティブラーニングに重点を置いた双方向のスタイルを採用しています。
この学科の特長は、実践的な授業が中心であること、教員陣には現役の実務家が中心であること、1年次は全員が学生寮で共に学ぶこと、そして全員が海外短期留学を経験することです。教員陣には、ベンチャー企業経営者やNPO創業者など、多彩なバックグラウンドを持つ実務家たちが揃っており、学生たちの成長を支援しています。また、学部長には、Zホールディングスの企業内大学Zアカデミア学長として社会人リーダー教育を行う伊藤羊一氏が就任しており、教員陣全員とともに、学生たちの才能と情熱を引き出す学部を創造することを目指しています。
おわりに
起業家として独立し、自分のビジネスを成功させることは、多くの人にとって大きな夢です。しかし、夢を実現するためには、専門的な知識や経験、そして周りのサポートが必要不可欠です。今回紹介した「起業が学べる大学10選」は、そんな夢を持つ学生たちにとって、起業家としてのスキルや知識を身につけることができる場所です。
ぜひ、自分に合った大学を選んで、起業家としての道を歩んでいってください。