大学に入学するためには、当然のことながら受験をして合格しなくてはいけませんが、学力不足以外で、大学に進学したいけれど進学できないというケースもあります。それは大学の学費など必要経費です。
家庭の経済面に余裕がない人は、決して安くはない大学の学費など諸経費を用意することができないため、泣く泣く進学を諦めるといったパターンも少なくありません。
そのような経済面の事情を抱えて進学できない人をサポートするのが、奨学金・助成金です。では、奨学金・助成金はどのようにして探せばいいのでしょうか。
今回は、奨学金・助成金の探し方・種類・探す際の注意点などについて、詳しく解説していきましょう。
奨学金・助成金を提供する運営団体の種類
奨学金・助成金について知るには、まず奨学金・助成金とは、どのような機関が提供しているのかを把握することです。以下より奨学金・助成金を扱っている運営団体について説明しましょう。
公的機関
国や自治体といった公的機関は、行政施策として奨学金・助成金制度を設けています。国費によって運営されている日本学生支援機構、全国の地方自治体に申請することで受給可能です。自治体の場合、大学の学費だけでなく小学生〜高校生の手当も給付しています。
民間機関
奨学金・助成金制度を実施している民間機関の種類は、以下の通りです。
- 公益財団
- 一般財団法人
- 一般社団法人
- 認定NPO法人
- 銀行・大学や専門学校などです。
それぞれが独自の基準で奨学金の給付を行なっています。
奨学金の種類・特徴
奨学金にはどのような種類があるのでしょうか。次よりその種類をみてみましょう。
給付型
文字通り完全に給付されるタイプで返済をする必要がないのが、給付型です。借金ではないため返済義務がなく、給付された金額は全額すべて学費・諸経費として使用できます。ただし、受給するには、学力・家庭の経済力などの審査基準をクリアする必要があり、その審査基準が厳しいのがデメリットです。
貸与型
給付型より優しい審査基準のため、比較的誰でも審査に通過しやすいのが、貸与型の奨学金制度です。全額そのままもらえる給付型と異なり、貸与型で受け取れる金額は貸与であるため、返済義務が発生します。返済期間は数年〜10数年であり、決められた期間までに返済しなくてはいけません。
貸与型は、以下のような2タイプが存在します。
第一種
卒業後に月々の返済をする際、利子が発生しないタイプが第一種です。学力・家庭の経済力ともに審査基準が厳しめとなっています。また、採用人数が少ないために、対象者がすぐに規定人数に達してしまうこともデメリットです。
第二種
卒業後に開始する月々の返済において、利子が発生するのが第二種です。利子のために貸与した奨学金の金額以上に支払いをしなくてはいけないため、トータルでみた場合出費が増えます。ただし、返済期間は10数年なので、長い返済期間を考えた場合、それほど大きな負担にはならないでしょう。
利子が発生する分、第一種に比べると審査基準が優しいのがメリットです。また採用人数が多いために、枠が埋まってしまう心配もありません。
奨学金の基礎知識を頭に入れておこう
奨学金を選ぶ前に、基礎知識ともいえる奨学金の情報を知っておくと申請前・申請後に各種手続きの間違いなどの回避が実現します。奨学金に関する基礎知識を、以下より説明しましょう。
金利のタイプは2種類ある
貸与型奨学金の第二種には利息が発生しますが、その利息の金額を決めるペーセンテージである金利は、2つのタイプを選ぶことが可能です。第二種の金利の2種類の特徴は以下の通りになります。
- 固定型:奨学金の完済が済むまでずっと同じ金利
- 変動型:5年ごとに金利を見直して変動することもある金利
変動型を選んだ場合、見直しの際に金利が下がって月々の利息も以前より下がる可能性があります。ただし、金利が上がった場合は、それにより利息の金額も上がります。そのような利息のアップダウンを気にしたくない人は、固定型がおすすめです。
更新は1年ごと
奨学金の代表格である日本学生支援機構の奨学金は、1年ごとの更新となっています。1年ごとなので、奨学金の契約が決まったら、卒業まで契約が続くわけではありません。
契約を続行するためには、1年のうちの毎年12月〜翌年2月ごろに継続願の書類を提出する決まりになっており、奨学金の対象内であるかを確認する審査も行われます。学力・家庭の経済力が審査基準を満たしていれば、契約更新です。
申請の種類は2種類
奨学金を申請するタイミングは以下のような2種類があります。
- 予約採用:大学進学前の高校3年生の時に申請
- 在学採用:大学に入学してから申請
予約採用は、申請した時点で正式に大学進学が決まっていない状態でも、申請が可能です。募集回数・申請期間は一般的には高校3年に進級した4月に案内されますが、学校により異なっているので確認する必要があります。
また、特別な申請方法として用意されているのが緊急採用・応急採用です。これは家庭の事情(親の離婚・死別・失業など)で経済面が急変した時に採用されます。緊急は無利息・応急は利息ありとなっています。
奨学金・助成金を探す際に確認すること
奨学金・助成金を探す際、確認するべきことがあります。確認を怠るとあとで後悔することになるでしょう。では、確認するべき項目とは何か、以下より説明します。
家庭の経済面
親の年収および世帯人数によって奨学金の額は変動します。奨学金の目的は「経済面で困窮して大学進学が困難な人のサポート」なので、経済的に恵まれている家庭は奨学金の対象外となります。
経済的に裕福なのに学費や諸経費を浮かせたいために奨学金制度を利用するという考えは通用しないので、注意しましょう。
世帯・年収によってもらえる奨学金の金額は以下の通りです。
・会社員の家庭の場合
- 2人世帯:207万円・298万円・373万円(第一区分・第二区分・第三区分の順番)
- 3人世帯:221万円・298万円・373万円
- 4人世帯:271万円・303万円・378万円
・自営業の家庭の場合
- 2人世帯:135万円・192万円・245万円(第一区分・第二区分・第三区分の順番)
- 3人世帯:147万円・196万円・250万円
- 4人世帯:182万円・212万円・287万円
・親の資産
- 親が1人:1,250万円未満
- 親が2人:2,000万円未満
以上の収入・資産を下回った場合、奨学金の対象となります。事前にどれだけの経済状況なのか、確認しましょう。
学力
奨学金をもらうためには、ある程度の学力が備わっていることも重要です。奨学金の対象となる学力の基準は、以下の通りになります。
- 高校等における履修義務があるすべての科目の評定平均値が、5段階評価のうち3.5以上であること
- 将来、自立した社会人・成人として活躍する目標を持ち、そのために必要な学習の意欲を持っていること
平均以上の成績および勉強意欲を持っていることが条件です。大学に進学したい意欲があっても学校の成績が悪かったら、奨学金の対象除外どころか受験合格すらできないので、しっかりと勉強に励み平均以上の成績をキープしなくてはいけません。
志望大学に奨学金制度はあるか
志望大学に奨学金制度があるのか、事前に確認をしましょう。奨学金制度は全国すべての大学が実施しているわけではありません。志望校のために受験勉強をがんばっても、後になってその大学に奨学金制度はなかったという失敗をしないようにしましょう。
志望校に奨学金制度がない場合は、制度がある他校を目指す、あるいは志望校を変えずに大学以外の制度を使うという選択をすることが大事です。
覚えておくべき奨学金の大事なポイント
奨学金は審査・更新・卒業後の返済時の延滞など、大事なポイントがいくつかあります。それぞれの注意点をしっかりと把握して、トラブルを回避することが大事です。では、奨学金におけるいくつかの大事なポイントについて、以下より説明しましょう。
更新時の審査を通過しないと支給終了
先述した通り、日本学生支援機構の奨学金は1年ごとの更新で契約する仕組みです。更新では、その時の契約者の家庭の経済面・学力に対しての審査があり、審査基準が満たされなかった場合は、奨学金受給の対象外と判断されて、支給が終了になります。審査の際の結果は4パターンです。
- 継続:前年と変わりなく奨学金が支給
- 警告:奨学金の支給は継続、しかし次回同じ状態だったら支給ストップの可能性が高い
- 停止:一時的に支給ストップ
- 廃止:契約の解除
単位取得に失敗して留年になった場合は、廃止・停止など奨学金の支給ストップの処分が下されます。
審査落ちを予想して第二種があるか確認
奨学金の希望者の中には、最初から給付、あるいは金利なしの第一種を狙っている人もいるでしょう。しかし、給付・第一種は審査基準が厳しく、採用人数も少ないため、簡単に契約できるとは限りません。
そのため、審査落ちを想定して、第二種も契約候補として考えておきましょう。給付の審査に落ちただけで「もう奨学金は無理」と決めつけてはいけません。
返済が遅れた場合
卒業後に奨学金の返済が始まった際、返済が遅れると以下のようなペナルティが待っています。
- 延滞・滞納した場合:年率3%の延滞金が発生。
- 督促:滞納1ヶ月目から電話や通知で督促
- ブラックリスト入り:滞納3ヶ月オーバーになると、すべての金融履歴が登録される信用情報機関にてブラックリスト入りの扱いになり、他の金融機関の利用(キャッシング・ローン契約)ができなくなる
- 法的措置:滞納9か月オーバーになると差し押さえになる可能性もあり
上記のペナルティは、消費者金融や銀行からの借入・融資が延滞した場合と同様の措置です。奨学金といっても、貸与型は通常の借金と同じであることを忘れてはいけません。
返済延長、減額制度がある
毎月の返済が苦しい場合は、以下のような休在措置が用意されています。
- 返還期限猶予:最長10年間、返済期間が延長される制度。年収によって適用される
- 減額返還:最長15年間、月々の返済額が3分の1〜3分の2に減額できる制度。年収によって適用される
どちらの制度も適用されるには、以下のような条件があります。
- 返還期限猶予の条件:年収300万円以下、あるいは年間所得200万円以下
- 減額返還の条件:年収325万円以下、あるいは年間所得225万円以下
自分が条件を満たしているか、事前に確認することが大事です。また、延滞・滞納が実際に続いてから申請をすると、却下される可能性もあるので、早めに申請しましょう。
まとめ
経済的な理由で大学に進学できない人のための、強い味方となってくれるのが、奨学金です。しかし、中には奨学金は申請さえすれば、高額のお金がもらえると思っている人もいるでしょうが、簡単にもらえるわけではありません。
奨学金は返済の必要がない給付タイプだけでなく、返済義務のある貸与型もあります。どちらが自分に適しているのか、どのタイプが審査基準を満たしているのか、しっかりと確認することが大事です。
また、支給されている最中・卒業後の返済期間など、いくつかの注意事項があります。今回の記事を参考にして、奨学金の大事なポイントを押さえて、スムーズな利用をしましょう。
「日本経済大学」では、留学生の就職活動の支援を目的とした、留学生対象の専門ゼミを開講しています。そこでは、BJTビジネス日本語能力テストの受験を推奨し、学習も行っています。
■日本経済大学(都築学園グループ / (学)都築育英学園)
都築学園グループは、「個性の伸展による人生練磨」を建学の精神とし1956年に設立された大学です。2018年に開学50周年を迎えた日本経済大学は、経済・経営の実学に特化した2学部6学科17の専門コースを持っています。日本有数の、留学生を抱える国際色豊かな大学です。